2012 | 07.08 | Sun | 21:25

富士登山 2012

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榎本です。先日、富士山に登ってきた。7月1日に山開きしたばかりなので、時期としてはかなり早いほう。梅雨もまだあけていないので、ベストシーズンとは言えない。でも逆に言えば、混雑は確実に避けられるはず。そんな思惑もありながら、天気予報とにらめっこしつつ、仕事の抱え具合も考慮したうえで、天候が良さそうな日をピンポイントで狙って出かけた。

登山プランは、山小屋に泊まらず徹夜で登頂を目指す日帰り弾丸プラン。昼ではなく夜に登ったのは、別にご来光にこだわっていたわけではなく、そのほうが時間の効率がいいから。夜通し登って朝に登頂し、昼に東京に戻れば、仕事への影響は最小限に抑えることができるだろうと。仕事柄、徹夜は慣れっこなので問題ないはず。

自分にとって富士登山は初めてではなく、10年ほど前に2回経験あり。でも2回とも途中で悪天候に見舞われ、八合目あたりで引き返さざるを得なかった。ゆえに登頂経験はなし。そして自分のなかで山ブームが盛り上がりつつある今年こそ、三度目の正直でリベンジを果たそうと、密かに計画を練っていた。

19時30分、新宿ヨドバシ横の高速バスターミナルを出発。

僕が利用したのは富士急の五合目直通バス。これを利用すれば、新宿から富士スバルライン五合目まで一気に連れて行ってくれる。マイカーを持たない自分にとって、これがもっとも便利かつ合理的なアクセス手段。よって登山ルートは4つあるルートのうち必然的にもっともポピュラーな吉田ルートに。


乗客は外国人だらけ。外国人のあいだで、富士登山、流行ってるの?

21時45分、富士スバルライン五合目に到着。標高2,305m。

売店が一軒営業していたが、しばらくするとシャッターを降ろしてしまい、あたりは闇に包まれた。そして予想以上に寒い。半袖Tシャツ1枚ではとても耐え切れず、GYAKUSOUのジャケットを羽織る。

富士登山関係の本やウェブを見ると、高度に身体を慣らすために、ここで1時間ほど待機したほうがいいらしい。はやる気持ちを抑えて、その教えを守ることに。準備運動をしたり、東京で買ってきたまい泉のカツサンドを食べたり、紫煙を燻らせたりしながら、時間をつぶす。

22時30分、登山開始。

果たして生きてここへ帰ってこれるのか。


真っ暗闇のなか、ヘッドランプの灯りを頼りに歩き始める。まわりには人っ子ひとりおらず、寂しさがこみあげてくる。
あ、言い忘れたけれど、メンバーは僕ひとりです。芥川さんのレポートを読んでモロに影響を受け、孤独な山行もなかなか良さそうだなと思っていたので。

23時00分、六合目に到着。標高2,390m。

暗闇のなかをひとり思索にふけりながら黙々と歩くのも悪くない。ただ、当然ながら景色はまったく見えず、その点はすこし退屈だったけれど。

0時18分、七合目に到着。標高2,700m。

他の登山者を見かけると、妙にほっとする。それくらい登山道はガラガラだった。

1時47分、八合目に到着。標高3,020m。

登山開始から3時間が経過し、標高は3,000mを超えていた。しかし特に高山病の症状などはなく、まだまだ元気。このままいけば、山頂までスムーズにたどり着けるかな。そのときはそう気楽に考えていた。それが大きな勘違いだったとは気づかずに……。

3時40分、本八合目に到着。標高3,350m。

登山開始から5時間が経過。空がすこしずつ白み始めてきた。案内板にはここから山頂まで83分と書いてあり、すこし心が折れる。もうだいぶ登ってきたのに、まだそんなにあるのか、と。

そしてこのあたりから、体調に異変発生。呼吸が急激に乱れ始めてきた。明らかに酸欠状態。それもそのはず、標高3,500m付近の酸素濃度は、地上の半分程度しかないらしい。知識としては知っていたけれど、酸素が薄いということがこんなにつらいものだったとは。そして風が強く、真冬のように寒い。防寒用のパタゴニアのダウンベストと雨用に持ってきたNSWのゴアテックスジャケットを着込む。しかしそれでも寒い。ちょっとやばいかも。

たまらず近くの山小屋に駆け込み、コーヒーで一服。

すこし生き返る。ビールも売られていたが、とても飲める気分ではなかった。

4時23分、八号五勺に到着。標高3,450m。
動悸は激しさを増していくばかり。数歩進むだけで、心臓がバクバクしてくる。気を紛らわせるため、タバコに火を点ける。そしたら余計に呼吸が苦しくなった。自業自得とはまさにこのこと。

そしてちょうど御来光館という山小屋のあたりで……

ご来光キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
あまりの絶景に息を呑む。体力的には依然として厳しいけれど、気持ちはだいぶ和らいだ。


ご来光に照らされる残雪もまた美しい。

5時08分、九合目に到着。標高3,600m。

登山開始から6時間半が経過し、体力はもはや限界。もう無理。つらい。きつい。帰りたい。俺はなぜこんなところまで来てしまったのか。でも、上を見上げると、山頂までもうすぐ。あとすこし頑張るか……。そんな自問自答を繰り返しながら、最後の力を振り絞る。


山頂はすぐそこに見えているのに、なかなか辿り着かず、もどかしい。

6時20分、ようやく山頂に到着。標高3,710m。

五合目からの所要時間は休憩込みで7時間50分。長かった……。

そして無事に登頂した安堵感からか、強烈な睡魔が襲ってきた。寝たら死ぬぞ〜! と自分に言い聞かせながらも、身体を横たえたら最後、30分ほど居眠りしてしまった。

目を覚まし、軽く山頂を散策。

至るところに雪が残り、山小屋はまだ営業していなかった。

山頂をぐるりと一周する、いわゆる「お鉢巡り」は、あまりにも疲弊していたため断念。実質上の日本最頂地点である剣ヶ峰(3,776m)の踏破は、また次の機会ということで。

そういえば、山頂でも外国人を結構見かけた。そして彼らの多くが驚くほど軽装。スウェットにジーンズだったり(明らかに動きづらそう)、ナイキフリーを履いていたり(富士山はゴツゴツした岩場が多く、ハダシ感覚のシューズは厳しいはず)。でもそんなのはまだかわいいほうで、半袖短パンにクロックスという出で立ちで山頂をうろついている欧米人を見たときは、さすがにもう笑うしかなかった。

下山もなかなかひと苦労。残雪のため下山道が封鎖されていたため、登山道をそのまま下りるしかなく、山頂から五合目まで5時間ほどかかった。帰りのバスに乗る頃には、足元はフラフラ、膝はガクガク。下山道が利用できればこんなに大変じゃなかったはず。

下山途中、山小屋でカップラーメンをオーダー。600円。

山で食うカップラーメンの美味さは異常。銘柄は日清カップヌードルしょうゆ味に限る。

というわけで、ようやく10年越しの悲願を達成した(ってそんなに大げさなものではないけれど)、今回の富士登山。足元はナイキのメリウェザーでした。

次は何を履いて登ろうか?

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