About adidas ENERGY by THOMAS SAILER(adidas Japan)
via
SHOES MASTER
Web SPECIAL
本誌最新号とウェブスペシャルでも掲載した
アディダスのキーマンへのスペシャルインタビュー。
本誌初登場となった
トーマス・タイラー副社長(アディダスジャパン)の
バックボーンとニュープロジェクト、
アディダスエナジーについて。
抜粋して紹介する。
About THOMAS SAILER
(General Manager Tokyo and
VP Marketing adidas Japan)
–––東京に来られてどれ位になりますか?
ドイツ本社から2014年に東京に赴任してきました。6年後の2020年に東京で行われる国際大会が迫っていた時期でした。アディダスにとって東京は、スポーツの観点とライフスタイルのストリートウェアやスニーカーを展開する上で非常に重要な都市です。2002年のサッカーワールドカップの時に初めて来日して、以降も出張で何度か来ていたので、東京がどういう街か少しは知っていました。個人的にも東京が大好きで興味があり、おそらく自分にフィットすると思っていたんです。なので、国際大会を前にした大事な時期に自ら希望して赴任しました。
General Manager Tokyo and
VP Marketing adidas Japan
THOMAS SAILER
–––アディダスに入社した理由を教えてください
アディダスで働くことが私の夢だったんです。6歳からサッカーを始めて、1970年代、80年代とドイツでサッカーと一緒に育ちました。当時、アディダスが表現していたスポーツで生み出される感情や価値観にすごく共感していました。だから、どうしてもアディダスに入りたくて、アディダスにずっと履歴書を送り続けていたんです、色々とバージョンを変えて。今でもよく冗談で言うのですが、私があまりにも何度も履歴書を送るものだから、人事担当者が根負けして「じゃあもうトーマス、来ていいよ、働けよ」という感じになったのではないかと(笑)。
–––そうだったんですね(笑)。アディダスに入社して最初は何を担当されていたのですか?
サッカーのコミュニケーションマネジャーとして働き始めました。最初のプロジェクトは、ジダン選手やベッカム選手との仕事だったんです。その時は本当に夢のようで、こんなに楽しい仕事するのに給料をもらっていいのかというぐらい(笑)、毎日が楽しかったですね。それから10年間、サッカーを担当していました。
–––それからライフスタイルカテゴリーのアディダス オリジナルスに?
はい。私がオリジナルスに移った頃は、すごく面白い時期でした。2004年に“A BATHING APE”(ア ベイシング エイプ)とのコラボレーションが始まり、2005年にはスーパースター35周年があったりと、この時期に複数のコラボレーションが始まり、Y-3がローンチしたタイミングでもありました。スニーカーカルチャーが盛り上がり、本当に面白くなってきたターニングポイントでしたね
–––そうですね、その当時に色々始まっていますよね
本当にエキサイティングな時期だったと思います。オリジナルスが部署としてまだ小さく、社内でも別会社みたいな雰囲気で。小さな部署だったからこそ自由度も高くて、プロジェクトの規模は問わず、今日ではできないようなプロジェクトも沢山ありました。その時がアディダスで働いて一番楽しかった時期かも知れませんね。
adidas ENERGY / Jeremy Scott Forum Money Low
アディダス エナジーからリリースされるジェレミー・スコットとのコラボレーションモデル。
About adidas ENERGY
–––ニュープロジェクト、“adidas ENERGY”(アディダス エナジー)について教えてください
現在、アディダス オリジナルスにおいて、メインとしてインラインがあり、スケートボーディング、そしてビヨンセやカニエ・ウェスト、ファレル・ウィリアムスをはじめするクリエイターや他ブランドとのコラボレーションを展開しています。これらのラインとは別に、アディダスとしてのブランドの熱をけん引する、スニーカーコレクションを作るために生まれたのが「アディダス エナジー」です。往年のスニーカーファンと新世代のスニーカーヘッズ、両者に喜んでもらえるアディダスならではのプロダクト。各所のニーズに応えるためには、親和性、関連性のあるパートナーを選ばなければいけないですし、流通もコントロールしなくてはいけない。この目標を実現するために、ドイツ本社に「アディダス エナジー」専門チームが発足し、東京のクリエーションオフィスにも「アディダス エナジー」だけにフォーカスするチームが誕生しました。東京をはじめとするキーシティのカルチャーや空気感、今のトレンド傾向などを、アディダスのヘリテージと組み合わせる。それが「アディダス エナジー」です。
–––adidas ENERGYのコンセプトを教えてください
アディダスの歴史の中にあるヘリテージと、その背景にあるストーリーをスニーカーファンやスニーカーヘッズに伝えていくことがコンセプトですが、コラボレーションするパートナーが何を表現したいかを解釈すると、そこにスパイスが加わるわけです。8月にローンチしたラッパーのバッド・バニーとのコラボレーションで、バスケットボールシューズのフォーラムに音楽というスパイスを加えて新たなストーリーを表現したように、「アディダス エナジー」もモデルごとに各ストーリーを伝えています。
–––adidas ENERGYのヴィジョンを教えてください
「アディダス エナジー」の目的は、アディダスのブランドとしての熱を高めることで、ブランドを盛り上げ、けん引していくことです。東京はたくさんのインスピレーションで溢れています。そして、アディダスとして伝え切れていないストーリーがまだまだあります。6月に日本人アーティストのキネ(KYNE)とスタンスミスがコラボレーションしたのですが、これも東京(日本)のストーリー。世界に通用する日本発信のコラボレーションでした。そして今後は、主要都市のひとつである東京のフィルターを通した、東京に特化するプロダクトをさらに多く作っていきたいと考えています。2022年夏にローンチを予定しているので期待していてください。
トーマス・サイラー(アディダス ジャパン マーケティング担当副社長)
ドイツ出身。6歳からサッカーを始め、プロサッカー選手を目指して練習に明け暮れる青春時代を過ごす。残念ながら、プロサッカー選手の夢は断たれ、ドイツの大学を卒業後に単身で渡米し、ドイツ企業へ就職する。しかし、子供の頃からもうひとつの夢だったアディダスで働くことが諦められず、何度も履歴書を送り、ドイツのアディダス本社に合格。サッカーコミュニケーションマネジャーからスタートし、サッカー担当を10年務める。その後、2003年にライフスタイルカテゴリーのオリジナルスに異動し、スニーカーカルチャーのアイコンとしての礎を築く。2014年、本人たっての希望により、アディダス ジャパンへ赴任し現在に至っている。マイ フェイバリット アディダスは、ロッド・レーバーとウルトラブーストOG、アディゼロ ボストン。
編集後記
アディダスが新たに動き始めると聞いた時、久しぶりに心が躍った。なぜなら、昨今のスニーカーマーケットにおいて、アディダスに今ひとつ元気がないと感じていたからだ。我々編集部は、2012年に拙著『Sneaker Tokyo vol.4 addicted to “adidas”』で東京のスニーカーカルチャーの文脈から見たアディダスの魅力を多角的に掘り下げた書籍をリリースしている。その目的は、アディダスの「現在」を知り、その「未来」を探るための旅に出ること。企画・取材は一年半に渡って行われ、創業の地であり今も本社があるドイツのヘルツォーゲンアウラッハで日本メディア初となる新社屋内の撮影とキーマンへのインタビューを敢行。アクションスポーツなどの拠点がある米国ポートランド、日本・東京デザインオフィスの三都市を巡る旅で、当時のアディダスのすべてを取材した。その時に、創業者であり靴職人だったアドルフ・ダスラー氏から受け継がれたクラフトマンシップの血が脈々と流れ続けていることを肌で感じた。今回の取材でも、トーマス副社長の口から「アディダスは靴職人の息子が後を継いだ靴の会社である」と語られたのが印象的だった。世界のリセールマーケット(転売市場)が加熱する中、地に足のついたクラフトマンシップを感じられるアディダスらしいプロダクトに期待したい。今のスニーカーマーケットにアディダスに変わる歴史を持ったブランドはないのだから。
SHOES MASTER編集部
『Sneaker Tokyo vol.4 addicted to “adidas”』
編・著:SHOES MASTER編集部
バイリンガル編集(日本語/英語)
(2012年4月発売)※現在は販売していません