Photo : Masataka Nakada(STUH)
Edit : Shin Kawase

Italian sports brand since 1959
Restart! ellesse shoes
Part2

イタリアで生まれ60周年を迎えたエレッセの記念すべき年に、スニーカーに特化したラインナップで再構築されたエレッセ シューズがリスタートした。エレッセといえば、アパレルのイメージが強いが、その歴史の中には、アメリカのプロスケーターから熱烈な支持を集めたシューズも存在していた。再始動したエレッセの過去と未来を取材した。

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About ellesse shoes
YOPPI(Hombre Niño)
Interview

YOPPIが語る、
シューズブランドとしての“ellesse”

エレッセ シューズの歴史を紐解く上で欠かせない人物がいる。それがYOPPIこと江川芳文氏である。彼は海外のプロスケーターがエレッセの“ASSIST”(アシスト)を愛用していることに影響を受け、当時、東京でアシストを履いていた一人だった。エレッセに対する想いを聞いた。

30年位前のアメリカ西海岸で
エレッセを履いているのを見て衝撃を受けた

–––エレッセというブランドを知ったのは、いつ頃ですか?
17歳頃で今、47歳なんで30年位前になります。ずっとスケートやってて15歳からアメリカにスケート留学してたんです、1カ月半位のタームで行ったり来たりしながら。基本はサンフランシスコ、ロサンゼルス、サンディエゴの3都市。その西海岸で大好きだったスケーターグループの人達が当時エレッセを履いていたんです。トミー・ゲレロさんとか、リアルスケートボード社長のジム・シーバウトさん、ナタス・カウパスさんとか。ナタス・カウパスさんといえば、マーク・ゴンザレスか彼かという位、ストリートのレジェンドで。あと、ドッグタウンのスケーターのスコット・オスターさんとか。彼らを見て衝撃を受けたんです。とにかく格好良かったんですよね。口で上手く説明できないんですけど。スケートボード専門誌の“TRANSWORLD SKATEboarding”(トランスワールド スケートボーディング)や“THRASHER MAGAZINE”(スラッシャー・マガジン)に載ってたのも覚えています。

–––よっぽど衝撃的だったんですね
靴がシャンシャン、靄(もや)がかかっているって言ったら大げさですけど(笑)。当時、エアウォークやヴァンズをスケーターが履くのが普通だった時代。お洒落なスケーターは、プーマ クライドとかアディダスのキャンパス、ナイキ エアジョーダンのファーストだったりとか。そんな環境の中でイタリア製のエレッセ アシストを履いてスケートしていることが本当に衝撃的でした。

 

僕の10代後半は、
エレッセのアシストが足元にありました

–––それでエレッセを購入したんですね
3足手に入れて履いたんですけど、当時、ほとんど売ってなくて、なかなか買えなかったんです。ネイビーが一番欲しかったんですけど、全然買えなくて、赤でもよかったんですけど。憧れだったドッグタウンのスコット・オスターさんがネイビーを履いてたんですよ。だからずっと探したんですけど、そこには結局たどり着けず…。その思いが今でも生き続けている感じですかね。

–––当時、アシストを履いてスケートをしていたのですか?
はい。エレッセは、ソールが少し柔らかくてスケートボードのザラザラのデッキテープに食いつきがいいんです。スケートとの相性が良くて何とも言えない履き心地なんですよね。それにはまってしまってというか。ドッグタウン好きの同級生の友達とずっと「エレッセやばい」って言ってましたね。でも、なかなか売ってなかったんで友達のサイズがあれば買ってあげて、僕のサイズがあったら友達が買ってくれてましたね(笑)。スケートをすると靴がぶっ壊れるじゃないですか。でもエレッセはぶっ壊れにくかったですね。オーリーする滑るところがちゃんとカバーされてるんです(足の小指部分)。オーリーパットみたいに。

–––日本でエレッセを履いている人はいましたか?
ほとんどいなかったですね…。西海岸と同じでエアジョーダンのファースト、あとはヴァンズ、エアウォーク、ビジョンっていう三大カリフォルニアブランドでしたね。僕も三大ブランドは履いてたんですけど、ちょうど年齢的にも17、8、9って多感な時期というか、お洒落になる時期っていうか、色気づいた年だったんで、その象徴がエレッセだったんです。要は周りとかぶりたくないっていうのもあるんですけど、色気づいて、イエス、ノーをはっきりさせたいんです。何が格好いいのか?というこのチョイスが大切で。それが結局、今の仕事につながることになるとは当時は全然思ってなかったですけど(笑)。僕の10代後半は、エレッセのアシストが足元にありました。

 

エレッセとコラボレーションしたくて
過去に2回断られて、今回3度目の正直で
30年越しの夢が叶ったんです

–––コラボすることになったキッカケを教えてください
実は今回のコラボレーションの前に何度も交渉しているんです。僕のエレッセへの思いが強すぎて、2000年位に当時、エレッセを日本に輸入していた会社にアプローチしたんです。でも門前払いされてしまって…。5年位前にもゴールドウインさんがエレッセをやるようになってからも直談判したんですけど、当時はエレッセをリブランディング中だったらしく、コラボレーションなどするタイミングではないと断られました(苦笑)。

–––今回のコラボレーションが「3度目の正直」だったんですね
そうなんです。30年越しの夢が叶ったんです。2011年にパリのコレットショップがコラボレーションモデルをリリースした時には本当に悔しくて…。俺は絶対履いてやんねえぞっていう気持ちでした(笑)。

colette x ellesse “Fab 5” Assist 1 (2011)

–––今回のコラボレーションモデルのテーマを教えてください
スコット・オスターさんが履いていたネイビーがテーマになっています。当時、欲しかったけど結局買えなかった幻のモデル。あと、僕のスケートチームの“T19”(ティー・ナインティ)のイメージカラーがブルーだったりするんで。アッパーの内側にはオンブレ・ニーニョのネームを入れてもらっています。それに当時はなかったローカットモデルを作ってもらいました。

世代を超えて、人と同じじゃ嫌な
天邪鬼な人に履いてもらえたら嬉しい

–––コラボレーションモデルをどんな人に履いてほしいですか?
僕らの世代前後位の人達に履いて欲しいですね。当時のバンドスケーター的な方とかも好きでしょうし、パブリックエナミーとか好きな方も好きかもしんないですね。あと、全然その辺を知らない10代の人にも履いてもらえたらいいです。アンチメジャーブランドじゃないけど、世代を超えて人と同じじゃ嫌な天邪鬼な人に履いてもらえたら嬉しいですね(笑)。

–––ムービーも制作されていますよね
そうなんです。1985年にリリースされたノルウェー出身のバンド “a-ha”(ア-ハ)の名曲“TAKE ON ME”のミュージックビデオからインスパイアされています。エレッセを履いていた時の時代背景的にこの曲がずっとあるんで。だから多分、当時を知ってる人が見たらスーっと入るような作りにしました。登場しているのは当時の僕です。スケートボードに乗って、バスケット。当時にタイムスリップした感じですが、それを現代風にしたっていう感じです。

–––今後の展開を教えてください
今回のコラボレーションモデルは12月にリリースされるんですけど、2020年に向けても取り組みは続く予定になっています。なので第2弾モデルにも期待してもらいたいですね。

–––SHOES MASTER読者へ一言メッセージを
今、転売とかすごいじゃないですか。駄目だと言ってるわけじゃなくて、転売目的でしかスニーカーを買ってない人たちが沢山いますよね。この記事の写真を見て直感でピンときたら、ぜひ店頭で足入れして、上から見て、気に入れば履いてみてください。純粋にスニーカーが好きなスニーカーファンにエレッセのアシストを履いてもらえたら嬉しいです。

ellesse×Hombre Niño “Assist Hi & Low”

 

YOPPI / 江川芳文(えがわ よしふみ)
1972年、東京・経堂生まれ。15歳よりプロスケーターとしてのキャリアをスタートさせ単身で渡米。10代の後半は東京とアメリカ西海岸を往復する生活を送る。プロスケーターの傍ら1994年、自身のショップ“HECTIC”(ヘクティク)を裏原宿にオープンさせ、2012年からオリジナルブランドの“Hombre Niño”(オンブレ・ニーニョ)を設立。国内外問わず、様々なブランドやアーティストとの協業を果たし、裏原宿を中心とした日本のストリートカルチャームーブメントを牽引。2015年春夏シーズン、“XLARGE®”(エクストララージ®)から新たなレーベル“PLUS L by XLARGE®”(プラス・エル・バイ・エクストララージ®)を発足し、ディレクターとしての活動もスタートさせている。

About Hombre Niño
2012年設立。オンブレ・ニーニョとはスペイン語で “大人・子供”という意味。デザイナーであるYOPPI氏の現在のライフスタイルを根底に構成。スケートボードやBMXなどを介し、大人と子供が共有できるプロダクトを提供している。

ellesse Assist Hi(1984)
エレッセの名品、アシスト ハイは1984年にバスケットボール専用シューズとして設計され誕生したパフォーマンスシューズ。1980年後半にはバスケットボールシューズにもかかわらず、名立たるレジェンドスケーターに愛され、ストリートでも支持されたエレッセ フットウェアの代表作。2011年にはパリのコレットショップとのコラボレーションモデルで復刻され、世界中のファッショニスタからも一躍脚光を浴びた。2020年春夏コレクションでは、ブランド創業60年を記念して、アシスト ハイの完全復刻モデルがリリースされる予定になっている。

About ellesse
エレッセは、1959年にイタリア・ペルージャで誕生したスポーツブランド。創業者は、貴族の血を受け継ぎ、スポーツをこよなく愛したレオナルド・サルバディオ。各国の王族とスキーやテニスを嗜んだ彼は、スポーツシーンに機能と気品を求め、革新的なスタイルを生み出した。1960年代に風の抵抗を軽減させ、美しいシルエットのスキー用パンツ、ジェットパンツがヨーロッパで大ヒット。1970年代には白一色のテニスウエアに美しいカラーリングを施し、トッププレーヤー達が愛用したことで世界的に知られるスポーツブランドとしての地位を確立した。ロゴマークのハーフボールマークは、テニスボールとスキーの先端を形どり、情熱の赤とイタリアの太陽のオレンジで彩られている。

 

ellesse×Hombre Niño “Assist Hi”
¥18,000+tax(12月13日発売予定)
Size : 23.0~28.0, 29.0cm

ellesse×Hombre Niño
Cap¥5,000+tax(12月13日発売予定)
Long SleeveT-Shirt¥8,000+tax(12月13日発売予定)

ellesse×Hombre Niño “Assist Low”
¥16,000+tax(12月13日発売予定)
Size : 23.0~28.0, 29.0cm

 

About Sneaker
YOPPI(Hombre Niño)
Extra Interview

YOPPI氏に聞いた、
スニーカーについて

–––スニーカーに興味を持ったのはいつ頃ですか?
小学校5年生の時です。金も持ってないのに実家近くの成城のスポーツ店でアシックスのジョギングシューズを予約して帰ってきたんです(笑)。第1回目に色気づいた時でしたね。そのアシックスのランニングシューズが本当に格好良く見えたんですよ。

–––自分のお小遣いではじめて買ったのがアシックスのジョギングシューズ?
いや、アシックスのジョギングシューズは、おばあちゃんをだまくらかして(笑)、一緒にスポーツ店に連れてって買ってもらいました。それから砧中学でバスケット部に入ってナイキのエアフォース1のハイカットを買ってもらって履いていました。普段はコンバースのチャックテイラー。ネイビーのハイカットでした。

–––現在までのマイ フェイバリット スニーカーベスト3を教えてください
順番なしにして3足挙げると、アディダスのキャンパス、プーマ クライド、エレッセのアシストになりますね。アディダスのキャンパスは全部集めましたからね、すべてオリジナルで全色。当時数少ないオリジナルのキャンパスを履いてスケートボードするっていうのがドキドキしたんです。なんつうんすかね…踏み絵のような気持ちというか。どんどん壊れてくじゃないですかスケートすると。やればやるほど壊れるし。切ないんだけど最後にぶっ壊れたらそれで終わりっていう。それが格好いいみたいな感じで履いていましたね。

–––良いスニーカーの条件とは何でしょう?
スケートボードする時に限っては履き心地は気にするけど、普段のときはオフってるんで、履き心地の悪さも全然気になんないっていうか。本当に自分が格好いいと思うものは、履き心地が悪くてもそれはそれでいい。あと、上からの眺めっていうか、自分が履いたスニーカーを自分の目で見た眺めが、びっしりはまる靴が良いスニーカーですね。どんな見た目が良くても、履かないと良いスニーカーかどうかは分からない。

–––YOPPIさんが考えるスニーカーの魅力とは、何ですか?
スニーカーって履きたい時期があるから不思議ですよね。市場の状況に対して履き方が変わるというか。購入したけど今は気分じゃないからって寝かしといたりして。スニーカーは大好きで今でもよく買うんですけど、今流行っているスニーカーには全く興味ないですね…。買うのは旅行先が一番多いです。インターネットで買おうって頑張るんですけど、やっぱり外れますよね(苦笑)。スニーカーは自分の目で見て手に持って、そして履いてみないと。今でもロンドン、アメリカに行くとメディアに入ってこないスニーカーがあるんですよね。アメリカだとレザーなのにイギリスではヌバックで出てたり。そこに行かないと買えないスニーカーを探すのも楽しい。それがスニーカーの魅力じゃないかと思います。

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