Photo : Masataka Nakada(STUH)
Edit & Text : Shin Kawase

Mizuno Sports Style

Special Collaboration for Autumn/Winter 2020
“WAVE PROPHECY for Graphpaper”

2020年春、ウッドウッドとビームスのコラボレーションモデルが発売されると瞬間的にソールドアウトして話題をさらったミズノスポーツスタイル。瞬く間に市場から消えた2モデルは、いずれもプロダクトの完成度が高く、スニーカー業界関係者にとどまらず、ファッション業界関係者をも唸らせる仕上がりだった。注目の2020年秋冬最新作は、コンセプトショップであり、ファッションブランドでもあるグラフペーパーとの共作モデル。その全貌を取材した。

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About “WAVE PROPHECY for Graphpaper”
Interview with
Takayuki Minami(Graphpaper)


グラフペーパー
代表 南 貴之

グラフペーパーといえば、同名のショップやヒビヤ セントラル マーケットをはじめ、数々のコンセプトストアをプロデュースしてきた南 貴之氏がディレクターを務めるブランド。バイヤー、クリエイティブディレクターなど様々な顔を持つ南氏に今回のコラボレーションモデルの詳細と、スニーカー、ミズノについても取材した。


About Graphpaper

–––まずグラフペーパーについて教えてください
2015年にコンセプトショップとしてグラフペーパーをオープンさせて、洋服のブランドとしては、青山のお店のスタッフが着る制服を作ったのが始まりです。人の気配を消すみたいなのが最初のテーマだったんです。従来のセレクトショップって、スタッフの格好とかもお客さんに伝わって、それで販売していくスタイルだと思うんですけど、グラフペーパーの場合はギャラリーがコンセプトで、洋服は商品でなく作品だという考え方。作品がメインなのでスタッフが目立たないように最初にショップコートを作って、その後に春夏用のセットアップの服を作ったんです。洋服のデザインに関しては、都市生活における用途を残して、残りの要らないものは全部引いてしまおうというすごくミニマルでシンプルな考え方なんです。お店がオープンしてから1年半後ぐらいにグラフペーパーの全体像としてファーストコレクションをお客さまにお見せして、それからブランドとして卸を始めたという経緯です。


Graphpaper AOYAMA

–––お店のグラフペーパーは、ギャラリーがコンセプトなんですね
はい、なので単純に全部並列にしたかったんです。僕の場合は、古いものとか新しいものとか、洋服だろうが洋服じゃなかろうが、全てのものを全部フラットに見ているので、そういうものを提案できるお店にしたいが出発点なんです。洋服を売るんですけど、お店は洋服が入ってない空間がすごく素敵だなと思っていて…。できればその素敵な空間をそのまま留めておきたいという思いがあった。要はアート作品が並んでいるギャラリーみたいな。だから、お店には一見、洋服がまったくなくて、パネルを引き出すと中から洋服が出て来るという。お客さまも一遍に全部に見えてしまうと、面白さがなくなっちゃうというか、新鮮味がなくなっちゃうと思うんです。


Graphpaper AOYAMA

–––お店のグラフペーパーは、ギャラリーがコンセプトなんですね
それを解決する手段として、ひとつひとつ開けるという作業で、お客さまとスタッフとのコミュニケーションが必然的に生まれて、1個1個説明しなきゃいけないという。青山のお店は結構分かりづらい場所なのに、わざわざ来てもらって、洋服がまったくないので怒って帰りそうになる人もいたんですけど、パネルを引き出して洋服を見せると、みんな喜んでくれるんです。僕の場合、日常的にみんなが知っているものを、どうやったら面白くできるか?を常に考えているので、意外と普通に考えれば分かることなんですけど、皆がやらないからやったというだけですね。


About Sneakers

–––スニーカーについて聞きたいのですが、はじめて買ったスニーカーを教えてください
自分のお金で買った?10代のときに何買ったかな・・・アディダスのキャンパスかガッツレー?もう忘れちゃいましたね(笑)。でも俺20代前半ぐらいの時には、原宿のキャットストリートに自分で露店出してスニーカー仕入れて売ってた時期があるんです。

–––そうなんですね。そしたら今まで結構な数のスニーカーを履いてきたのでは?
そうですね…500足位は履いてますね。でもよく考えたら、革靴を履いてた時期が3カ月ぐらいで、あと全部、ほぼスニーカーしかはいてないみたいな感じですよね、人生において。購入したスニーカーは、ずっと保管してたんですけど、さすがに量が多いんで加水分解しちゃっているものがあったり。ある時期にほとんど人にあげたり、売ったりしました。何年か前にグラフペーパーの店の前でフリマをやったんですけど、出品したスニーカーは10分で全部なくなっちゃいました、結構な数でしたけど(笑)。

–––500足履いた中で、ベストスニーカー3足を挙げるとしたら?
ニューバランスの990 v3。実はニューバランスとか僕大嫌いだったんですよ。30代半ばぐらいじゃないかな、履き始めたのは。それまではNマークが入っている時点で、たまったものじゃない。こんなダサいスニーカー履けるかよ、ぐらいの感じだった。でも友人にいっぺんちょっとだまされてみろって勧められて履いたのがニューバランスの990 v3だったんです。それからそれを未だに一番履いてたりするんです(笑)。でも、v4とかv5になっちゃうと洗練されて格好良くなっちゃって(苦笑)、全然興味なくなって。やっぱり僕はダサいスニーカーが好きなんですね。あとは、ホカ オネオネのボンダイ 6。履くと楽だし、ダサ可愛い。あとは最近のアグでジップが付いている超ダサいCA805です(笑)。

–––ダサいスニーカーがお好きな南さんの(笑)、スニーカーの魅力とは何ですか?
やっぱり履きやすく動きやすいこと。僕のコーディネートの中で一番の外しが足元のスニーカーなんです。ここにパキッと革靴とか来ちゃうと、すごくつまんない人間みたいになっちゃうじゃないですか(笑)。だから、ここで外すみたいな。

–––グラフペーパーの洋服にベストマッチするスニーカーとは?
うちの服は本当にすごいシンプルなので、何でも合うと思うんですよ。丈をわざと短く作っているパンツとかもあったりとかして、ボリュームのあるスニーカーも合わせられるし、ローテクでも合うと思います。そういう意味ではスニーカーを選ばないで済むかな、うちの服の場合は。目の前にある靴はいたら何でも合います、多分。


About
Mizuno Sports Style 

“WAVE PROPHECY GRAPHPAPER”

–––コラボレーションする前のミズノに対してのイメージを教えてください
ずっと野球ってイメージだったんですけど、マウンテンリサーチの小林さんがミズノさんとコラボレーションして、アッパーが革靴でソールに空洞がある見たことないやつで(インフィニティ ブーツ ミズノ モック)。そのソールがすごく格好いいなと思って買ってずっと履いてたんです。

–––そうだったんですね、それから今回のコラボレーションに至った経緯は?
展示会のご案内を頂いて、お邪魔しに行ったときに、そのソールが進化して、スニーカーの形(ウエーブプロフェシー)になっていて…。そもそもグラフペーパー2020秋冬のテーマをディーター・ラムス※にすると随分前から決まっていて、結構前からディーター・ラムスがデザインしたビンテージオーディオ機器を買い付けていたんです。ウエーブプロフェシーってちょっとメカっぽいじゃないですか。これでディーター・ラムスのカラーリングを使って作ったら、滅茶苦茶合うんじゃないかなと思って。洋服とのマッチングもすごくいいだろうと。これはぜひやりたいと、すぐお願いしてって感じです。

※ディーター・ラムス(Dieter Rams)
1932年ドイツ生まれのプロダクトデザイナー。ドイツの家電メーカー、ブラウン社に入社後、モダンで画期的な家電製品を手掛け、1956年、はじめて透明アクリルのカバーを採用したことで有名なオーディオセット「SK4」を発表。1965年から1995年までブラウン社のデザイン部門のチーフを務める。その後、自らが率いるデザイン・チームとともに、20世紀を代表する多数の家電製品や家具を生み出している。
www.vitsoe.com

写真提供 : Graphpaper
Photo : Junpei Fukushi

–––コラボレーションモデルの特徴やこだわった所を教えてください
やっぱり全体的なカラーリングですね。ディーター・ラムスが手掛けたブラウンのオーディオって基本はグレーで、ボタンとか一部分だけオレンジが使われているんです。あと、アッパーのメッシュ部分はスピーカーのイメージでこだわりましたね。そのメッシュが普通は使わないようなクロスのもので、めっちゃ細かい。これは僕がどうしても貼りたいって言って、ミズノの齊藤くんに何回も探してもらって。

–––ミズノの担当は齊藤さんだったんですね
はい。それで後はなるべく表に出したくないと。すごいシンプルにミニマルにしたいってことで、いろいろ齊藤くんに無理言って、入れなきゃいけないものも全部外してもらって。

–––引き算の作り方ですね
ウエーブプロフェシーのベースモデルは、もうちょっとドラスティックなデザインだったんですけど、ディーター・ラムスのブラウンのオーディオってすごいミニマルなものなんです。その感じを表現したくて、フォントすらも変えさせて、全部グラフィックも変えちゃってもらっているんです。本当は入らなきゃいけないロゴを外してもらったり。結構めちゃくちゃなリクエストを齊藤くんにしてほとんど叶えてもらいました。

–––齊藤さんが対応してくれたんですね
そうです。齊藤くんじゃなかったら作れてないですね、本当に(笑)。齊藤くんから「南さん、こういうイメージだったらこうかな」って色々と提案いただいて、ファーストサンプル作って。これはどうですか、あれはどうですかって何度も繰り返して。色も2回濃く振ってみたりとかして、結構時間がかかりましたね。

–––このモデルって、このグレーのグレーさ加減が命ですもんね
そうなんです。なのでこのグレーさ加減には本当に満足しています。買い付けたディーター・ラムスのビンテージオーディオとこのシューズを並べたらすごくマッチングが良かった。販売する時には、ディーター・ラムスのオーディオを置いて、洋服が並んで、シューズがあるという展示になるので、そのテーマのもと、全てのものをリンクさせて作った特別なものになりました。

–––コラボレーションして改めて分かったミズノの魅力とは?
日本人が持つオタク的な要素があること。そこに一番共感できました。僕らも洋服を作る時に素材とか本当掘って探してこだわって、オタクじゃないですか。日本人ってオタク気質に掘り下げる所がリンクしました。ウエーブプロフェシーのソールも僕らは見た目の形状から入っちゃっているけど、よくよく聞くと、相当考えられて作られているんです。ミズノさんはそのクオリティに対する安定感みたいなのが本当にすごい。僕らはどちらかというとソフトのほうなので、サプライズをどう彼らと一緒に作れるかというのが今回のテーマだったので、いい組み合わせになったかなと。ブランドとして大事なのは、安定感とサプライズだと思っているので。

–––完成したウエーブプロフェシーを見てあらためて感想をください
グラフペーパーとしてはすごく完成度の高い、いいサプライズが出せたんじゃないかなって思います。だって、これダサくないですか?

–––ダサいかどうかは(笑)、読者に判断を委ねましょう。発売日と販売する店舗を教えてください
9月26日から販売する予定になっています。グラフペーパーの青山、日比谷、仙台、京都。あと全国の卸先さまにもちょっと送りますし、あとミズノさんの直営店にも並ぶ予定です。

INFORMATION
Graphpaper AOYAMA
東京都渋谷区神宮前5-36-6KARI MANSION 1A/2D

03-6418-9402
https://graphpaper-tokyo.com

 

Interview with
Takeshi Saito(Mizuno Sports Style)
About
“WAVE PROPHECY for Graphpaper”

グラフペーパーとの共作モデルのミズノ担当者は、新たなレーベル“rhrn”(アールエイチアールエヌ)の名付け親であり、rhrnを立ち上げた齊藤健史氏である。齊藤氏は高評価を得たウッドウッドとビームスのコラボレーションモデルも手掛けた新進気鋭の逸材。ミズノとグラフペーパー。その親和性とグラフペーパー南氏のこだわりをすべて受け入れ具現化したミズノの技術力を取材した。


ミズノ株式会社

グローバルフットウエアプロダクト本部

企画部ライフスタイル企画課
齊藤健史

–––テーマがディーター・ラムスと聞いてどう思いましたか?
個人的にかなりディーター・ラムスが好きで、聞いたときからワクワクしかなかったですね。大学時代は建築学科でひたすら建築の図面を描いて模型を作っていたので、ディーター・ラムスのインテリアとかに当時すごく影響を受けているんです。あの世界観を知っているからこそ、妥協はしたくなくて、ディーター・ラムスファンにも自信を持って届けられるモノを作りたいと思って取り組みました。

–––今回大変だった所は?
ディーター・ラムスのオーディオを自然な形で靴に落とし込む、ということですね。具体的には、メッシュ部分のスピーカーを表現したこととグレー色のこだわりですかね。南さんからも靴に落とし込んだときのメッシュの選び方を一番こだわりたいと言われていたので。スピーカーのメッシュの目の細かさをそのまま移行して落とし込むと、靴としては細かくなり過ぎてバランスが悪かったんです。ただ、格子状のメッシュのほうがスピーカーっぽくなるかなと思って、格子状で縦横のメッシュを探してたんですけど、やっぱり既視感というか、ちょっとマッチしなかった。それで最終的にたどり着いたのが、ミズノの独自で開発したエキスパートの機能メッシュ。ちょうど意図している仕様と似ていてマッチしたので採用しました。これを使えれば完成度にしても上がるし、ミズノとしても唯一無二のメッシュを使える意味は大きかったですね。

–––次にグレー色のこだわりですね
はい。グレー色の組み合わせを何パターンか作って、その中でより世界観に近いものを選んで、ということだったんですけど、同じグレーだけで色んな素材を使ってグレーにしているので、素材ごとにブレてもいいグレーと、ここは素材が違ってもブレちゃいけないグレーの組み合わせ方が難しかったです。あと、機械っぽいというか、家電っぽい、プロダクトデザインっぽいものを追求していくと、構築的過ぎる靴になってしまうんです。そうするとスニーカーとしては厳しい。それを解決するために色々と考えた結果、あえてつま先だけスウェードを残すことにしたんです。

–––つま先だけスウェードにしたら何が起こったんですか?
スウェードを残すことによって、ピンと張り詰めた感じが、ちょっとだけ和らぐ。これでより服ともあわせやすくなり、オーディオプロダクトがスニーカー化した雰囲気になったかと思います。ちょっとだけ野暮ったい感じになった。南さんの言葉でいうと、ダサくなった(笑)。 

–––あと南さんが色んなものをどんどん引き算の作り方で削っていったと
そうです。結構それも新鮮でした。ミズノはスポーツブランドなのでロゴマークは全面に出させていただいたんですけど、今回はまったく逆で、靴であればいいと。ディーター・ラムスというテーマがあるので、より印字もオーディオプロダクトっぽく、本当にミニマルなものだけ入れてくださいという強い希望があって、これより小さくしたらつぶれちゃうんじゃないかぐらいまで文字の大きさも本当に極限まで小さくしてあります。ここまでやってやっと本当にプロダクトとしても格好良いというか、ディーター・ラムスのプロダクトを知っている人からも、おおっ!というような感じのものに仕上げられたかなって思っています。

–––最後に今回のコラボレーションモデルをどんな方に履いて欲しいですか?
これをきっかけにミズノを知っていただいたグラフペーパーのファンの方。SHOES MASTER読者のスニーカーファンの方。お陰さまで少しずつ増えてきたミズノのスニーカーファンの方に履いて頂けたら嬉しいですね。あと単純に僕みたいに昔からディーター・ラムスが好きな往年のディーター・ラムスファンの方たちにも、氏へのオマージュとしてのひとつのプロダクトデザインとして受け入れられてもらえて履いて頂けたら本当に嬉しいです。

Mizuno Sports Style × Graphpaper
WAVE PROPHECY for Graphpaper
¥32,000+tax

INFORMATION
Mizuno

www.mizuno.jp/mizuno1906/

ミズノお客様相談センター

0120-320-799

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