Photo : Soma Doi (STUH)
Edit & Text : Shin Kawase

PUMA MIJ (MADE IN JAPAN)
Special Feature 2022 Autumn
“SLIPSTREAM LO BEAST MIJ” Part2

2022年7月。2度目の復刻を果たし話題となったレッド ファーの「スリップストリーム ロウ ビースト」。プーマが誇る最高峰モデル“MIJ”(MADE IN JAPAN)の匠の技を駆使した逸品だけに、往年のプーマファンも納得の仕上がりだった。その第2弾となるヒョウ柄の「スリップストリーム ロウ ビースト」が編集部に届いた。今回は、プーマジャパンの野崎兵輔氏と、ザ・ビーストが好きでよく履いていたというアトモスの小島奉文氏をゲストに迎え、その魅力について取材した。

このエントリーをはてなブックマークに追加

About
SLIPSTREAM LO BEAST MIJ
Heisuke Nozaki (PUMA Japan K.K. / MARKETING)
Hirofumi Kojima (atmos)
Interview

野崎 兵輔 / プーマ ジャパン マーケティング
東京都荒川区町屋出身。小学校5年生時にスニーカーに目覚める。現在まで所有したスニーカーは、1,000足を超えるスニーカーマニア。大学卒業後、現プーマ ジャパン入社。プーマ入社以来、インラインからコラボレーションに至る全てのモデルの発売日、コンセプト、デザインソース、素材、製作背景などをメモした通称「野崎ノート」は現在6冊に至っている。まさにプーマの生き字引であり、日本が世界に誇るプーママスター。

小島 奉文 / フットロッカー アトモスジャパン合同会社 メンズ シニアディレクター
1981年生まれ、埼玉県出身。文化服装学院を卒業後、2001年より「アトモス」の前身である「チャプター」でキャリアをスタート。その後、アトモスにて様々なポジションを歴任し、数々の別注企画を手掛ける。2013年より現職にメンズ部門を中心に幅広い活動を続けている。

About SLIPSTREAM LO BEAST

–––レッド ファーの「スリップストリーム ロウ ビースト」が好評でしたね
野崎 はい。お蔭さまで大好評で店頭には限られたサイズしか残ってないです。この度はずっと待ち望んでいた方とか、買えなくて悔しい思いをした方に、買っていただいてる感じですね。2013年の復刻モデルを二次流通で買おうと思っても、金額的にもコンディション的にも迷ってしまうけど、今回のレッド ファーは現代の最高の素材で作っていて、なおかつ気兼ねなく履ける所に共感をしていただいたかなと思っています。

SLIPSTREAM LO BEAST MIJ (2022)
¥35,200

–––第2弾となるヒョウ柄の「ザ・ビースト」の誕生秘話を教えてもらえますか?
野崎 北米で1987年にリリースされたバスケットボールシューズのスリップストリームがベースになります。1980年代後半位から、ヒップホップの流れもあり、バスケットボールシューズをタウンユースするスタイルがブラックコミュニティーを中心に根付くようになりました。それまではクライドやスウェードみたいなシャープなシルエットのものが街中で活躍していたんですけど、パーツ数が多いバスケットボールシューズが台頭してきたこともあり、動物の高級素材をコートシューズに乗せるっていうカルチャーが生まれたんです。アフリカ系アメリカ人の中で憧れとされていた高級品の毛皮のコートやヘビ柄のベルトやバッグ、革靴など。その先駆けになったのが1988年にリリースされた「ザ・ビースト ロウ」。その当時はまだヒョウ柄のスニーカーなどなかったので相当画期的だったと思います。

–––そうだったんですね。復刻の歴史を教えてください
野崎 ドイツ本社のグローバル企画から初めて復刻されたのが2002年、白い補強パーツのハイカットでした。その数カ月に通称「黒ヒョウ」と呼ばれる黒の補強パーツのハイカット、翌年の2003年にローカットの「黒ヒョウ」がグローバルで復刻されました。グローバル企画での復刻は、この3型のみで終了しています。

–––それから日本企画になるんでしょうか?
野崎 はい。“MIJ”(MADE IN JAPAN)シリーズの先駆けとなった「匠」シリーズ名義で2013年、25周年のタイミングでレッド ファーとザ・ビースト ロウ(ヒョウ柄で白と黒の補強パーツ)を2カラー発売しました。

–––今回の復刻はそれ以来になるんですね
野崎 そうです。今年はスリップストリーム35周年に当たるタイミングなので、サイドパーツに“SLIPSTREAM”としっかりプリントして。2013年モデルは諸事情があって“SLIPSTREAM”のプリントがなくブランクになってたので。

SLIPSTREAM LO BEAST MIJ(2022)

–––野崎さんの個人的な思い出はありますか?
野崎 オリジナルは履けなかった、と言うより買えなかったっていうほうが正しいですかね。ザ・ビーストってグローバル企画で日本での展開がなくて、すべて並行輸入品だったんです。1990年代初頭では既にめずらしく、幻のスニーカーでした。でも稀にお店にあったものはガラスケースの中に飾られて。でも大きいサイズしかないし、20万円以上の高値がついていて。いつか履いてみたいと思ったスニーカーがザ・ビースト。やっぱりオリジナルがほとんどない幻のスニーカーというのが、ザ・ビーストの持つ魅力でしょうね。なので2002年、2003年に3型復刻された時には全部買って、それが僕自身がはじめて履いたザ・ビーストになりました。

THE BEAST(2002)
プーマジャパンの野崎氏が初めて履いたという2002年に復刻されたザ・ビースト(野崎氏個人私物)。今でも圧倒的な存在感で独特のオーラを放っている。オリジナルのスリップストリーム ザ・ビーストが発売されてから35年。35年前に登場したザ・ビーストがどれだけの衝撃を与えたかは想像に難くない。

 

About THE BEAST

–––小島さんがザ・ビーストを知ったのは?
小島 1990年代の中盤、後半くらいにバスケットボールシューズのハイカットをデカ履きする文化があったんです。僕が文化服装学院に通っている頃で、サイズの大きいコンバースのハイカットを買って、靴紐をぐるぐるに絞って履くスタイルでした。そんな時に何かの雑誌で、幻の逸品としてザ・ビーストが神的な扱いで紹介されてて、それではじめて知りました。すごく衝撃的で今でも鮮明に覚えていますね。当時は玉数も全然なくて、あっても20万位して…。結局履けないまま学生時代を終えてしまいました。

–––それでははじめてザ・ビーストを履いたのは?
小島 アトモスに入社してすぐですね。2002年に「黒ヒョウ」のハイカットが復刻されたタイミングでした。確か原宿のプーマ直営店で買いました。うれしくて当時は本当によく履いてましたね。僕の中ではプーマ=ヒョウ柄なんです。プーマといえばヒョウ柄。1997年にリリースされたヒョウ柄のレモ スポットもそうだし、良い意味でも悪い意味でも、僕のプーマはその「ヒョウ柄」で止まっているんです。プーマはスニーカーに動物の素材を使った先駆けだと思うんですよ。そういった意味では、今回の復刻をアトモスで展開するのに迷いはなかったですね。しかもMIJだし。

–––MIJはどんな方が購入されていますか?
小島 やはり、違いが分かる方って言ったらいいのか、目の肥えた方というか上級者ですよね。値段も張るじゃないですか、海外製に比べると倍以上になる。だからこそ、その良さと価値が分かる方、本物志向の人が購入されるイメージですね。あと、履いて育てるっていう考え方がある人。感覚としてはデニムに近い感じで経年劣化も含めてずっと長く付き合える。相棒的な感じじゃないですけど。買ったらすぐに売る靴とは対極、真逆にある靴で買った人もずっと手放さないんじゃないかと思います。

 

About SLIPSTREAM LO BEAST MIJ

–––今回のモデルの特徴を教えてください
野崎 ヒョウ柄の素材は、第1弾のレッド ファー同様にイタリアから輸入した希少で上質なレザーを使い、補強パーツは姫路レザーです。このヒョウ柄のヘア付きレザーは、毛の色や毛の向きにすごく個体差があって濃淡も結構あるんです。右足、左足の両足をいい風合いに合わせるのが大変手間暇が掛かる作業ですが、それを一足一足すべて手作業で上手く組み合わせているのが特徴になりますね。

現代版にアップデートさせている機能はレッド ファーとまったく同じになります。非常に柔らかい質の高いレザーなので足馴染みが良いのと、日本人の足型に合うよう足裏が3Dフィットするカップインソールに変更して、アウトソールも路面との相性を考えてよりグリップ力の高いものを使っています。地面をしっかり掴んでくれて滑りにくくなっていて長時間でも快適に歩けると思います。

–––ヒョウ柄「スリップストリーム ロウ ビースト」をどんな方に履いて欲しいですか?
野崎 プーマファン、スニーカーファンの方はもちろんですが、ヒョウ柄は幅広い世代でファッションに取り入れやすいと思います。なのでヴィンテージ物や古着が好きな若い世代の方にも履いてもらえたらうれしいですね。オリジナル(1988年)を探すのもいいですが、MIJは3万5200円とプライス的には高いんですけれど、オリジナルと比べたらずっとリーズナブルな価格です。さらにサイズ展開もあって、安心して長く履けるように機能も改良されています。そういった意味ではコストパフォーマンスは最高にいいと思うので、この機会にぜひお試しください。

 

About PUMA MIJ

–––小島さんから見たMIJの魅力とは?
小島 さっき話した昔のバッシュもそうだと思うんですけど、長く履き込んだ風合いが格好いいと思うんですよね。だから、MIJに関しても新品より、履けば履くほど味が出てくるというか。いつも上質なレザーを使っているので、イメージ的には高級な革靴と同じで、マメに手入れしながら経年変化も楽しみながらずっと愛用していく。だからリセールとかあり得ないし、逆に言うと、値段が高くてもいい物だから長く履けるのもMIJの魅力かなと。だからMIJファンがついているのだと思います。

–––他ブランドの日本製と比べてMIJの優れている所は?
小島 プーマ ジャパンの野崎さんをはじめ、本物志向のスタッフが作っていることが強いし大きいですね。ヒョウ柄の素材をわざわざイタリアから取り寄せたり、レザーの個体差がすごいから手作業で全部いい風合いに左右を合わせたり、めちゃくちゃ手間暇かけて作っているじゃないですか。普通はある程度手を抜いちゃうと思いますよ。ある意味、ものすごく効率が悪いけど、職人気質の方々と一緒に妥協せず、こだわって作っているのがMIJの優れている所だと思います。

–––今後のMIJに期待することは?
小島 生産の効率が悪くてもずっと続けていってほしいですね。スニーカーマーケットでも究極の効率化が加速していて、非効率なものを排除して、どんどんつまらない方向に進みつつある。非効率だからこそいいもの、面白いものが出来ると思うので、MIJだけは絶対に残してもらって、プーマのヒストリーもMIJを通して日本文化と一緒に伝えられたらいいですね。あと最後に個人的に大好きなレモ スポットをMIJで復刻してください。よろしくお願いします(笑)。

 

SLIPSTREAM 35th Anniversary Model Vol.2
SLIPSTREAM LO BEAST MIJ

SLIPSTREAM 35th Anniversary Model Vol.2
SLIPSTREAM LO BEAST MIJ

Puma White
¥35,200

SLIPSTREAM 35th Anniversary Model Vol.2
SLIPSTREAM LO BEAST MIJ

Puma Black
¥35,200

取材協力:
atmos BLUE Omotesando
東京都渋谷区神宮前4-29-4 Barbizon78
03-6438-9445
www.atmos-tokyo.com

INFORMATION
プーマ お客様サービス
0120-125-150
www.puma.com

pagetop