SMWeb SPECIAL Why do Billy’s attract customers? Part1
編集部の河瀬です。
ビリーズといえば、
今年もビリーズマネージャーの
甲斐慎二さんにインタビュー取材を
させてもらった。
甲斐さんは熊本生まれ、
熊本育ちの「肥後もっこす」。
「本当はメディアに出たくないけど、
河瀬さんだから断れない(苦笑)」、
といつも協力してくれる有難い存在。
甲斐さんから語れる言葉には、
共感できることや
妙に納得できることが沢山あるのだ。
それは、編集部・河瀬も同郷の熊本出身の
「肥後もっこす」だからか?
その謎を紐解くために、
生まれ育った熊本での
幼少期時代のことから聞いてみた。
「肥後もっこす」
純粋で正義感が強く、一度決めたら梃子(てこ)でも
動かないほど頑固で妥協しない男性的な性質を指す。
激しい性格でも陰険ではなく、南国らしく大らかで明るい。
半面、不器用なところがあるのは否めない。
きまじめで純真な熊本県人は、裏技や小細工といった
ものとは無縁である。
出典:Wikipedia
この内容は、
ウェブスペシャルで7月に公開したものである。
今回は特別に年末スペシャルとして再度紹介する。
Why do Billy’s attract customers?
~なぜ、ビリーズに惹かれるのか?
その支持される秘密に迫る~
Photo : Kazumasa Takeuchi (STUH)
Edit & Text : Shin Kawase
ビリーズが5周年を目前に、精力的に動きはじめた。ビリーズといえば、2014年にスタートし、今や国内8店舗を構える日本を代表するスニーカーセレクトショップのひとつとなった。シューズ関係者にもその支持は高く「個人的な買い物はビリーズで」という声をよく聞くし、現に編集部スタッフもよく利用させてもらっている。不思議と惹きつけられるビリーズの魅力とは何なのだろうか?その秘密に迫るべく、ビリーズマネージャーの甲斐慎二氏を取材した。
Shinji Kai (BILLY’SENT Manager)
Interview
甲斐 慎二 / BILLY’SENTマネージャー
ショップコンセプト、バイイング、内装、WEB、プロモーション、接客に至るまでビリーズに関することの全てを取り仕切るビリーズのマネージャー。熊本出身の頑固な「肥後もっこす」としても知られ、一切の妥協を許さないそのスタンスはシューズ業界でも一目置かれる存在。
今の僕があるのは、
兄姉と熊本で生まれ育ったことが大きいと思っています。
–––初めて自分のお小遣いで買ったスニーカーは何ですか?
コンバースのオールスター ハイカット(マルーン)を小学5年生のときに買いました。1979年位ですかね…当時はまだ赤箱でした。完全に兄と姉の影響ですね。当時、矢沢永ちゃんがステージでオールスターのハイカットを履いていて、兄姉の友達もこぞって買って履いたんです。だから欲しくて欲しくて…必死でお小遣いをためて熊本最大の商店街に買いに行ったら、小学生じゃないですか、サイズがなくて(苦笑)。でも絶対に欲しくて一番小さいサイズを買って…合ってないのにデカ履きしていた思い出があります。そう考えると、もう小学生の時からスニーカーには興味がありましたね。中学生の頃は、パラディウムを履いてたりして。小さい頃から姉が読んでいた雑誌『an・an』とか『non-no』とか読んでいましたし。僕が高校生の時に、姉が新婚旅行でハワイに行ってすごく流行ってたメイド・インU.S.A.のニューバランスM990(グレー)を買ってきたんですよ。それを高校に履いて行ったら、ちょっと笑われましたからね。「何履いてんの」って(苦笑)。当時はまだそういう時代でしたね。まだランニングシューズがトレンドじゃない頃だったんで。高校生の当時は、コート系のトレトン、スペルガ。サンダルは、センシ。ファッションは、MA-1やB-3、リーバイスの501などが流行っていた。このトレンドは全国で熊本が一番早かったと思います(当時の熊本は全国的にもお洒落タウンで有名)。周りがみんなお洒落な人ばっかりだった。今の僕があるのは、兄姉と熊本で生まれ育ったことが大きいと思っています。
–––学校を卒業後、スニーカーショップで働きはじめたのですか?
いいえ。熊本の大学の付属高校を卒業したのですが、大学には進まずに、ちょっと東京に行ってみたい気持ちがあって上京してバイトしてました。東京には1年位居ましたね。それで熊本に戻って20歳位になると、そろそろ就職しないといけないと思って入ったのが南九州月星(月星系のコンバース、ニューバランスの販売代理店)なんです。だから、僕ぶっちゃけ、ショップの店員ってやったことないんですよ。販売代理店、卸の出身なんで。だから週末はもちろんビリーズの店頭に立つんですけど、本格的にお店に立っていたのはビリーズを立ち上げる時の1年間だけですね。もともとファッション関係の仕事をしたいと思っていましたし、ファッションの中で一番詳しいのは靴って思っていました。すべての始まりは、20歳の時に地元・熊本の南九州月星に入社したことでした。
–––働きはじめたころのスニーカーマーケットの状況を教えてください。
僕が入った年の1987年にちょうどナイキがエア マックス1を出したんですよ。まだ僕が入ったときはマックスっていうよりコルテッツが人気でした。ジョーダンも1990年のジョーダン5の時にやっとブレイクしましたが、ジョーダンって最初は全然売れなかったし、在庫の山になっていました。それが、第1次スニーカーブームが来る前ですよ。だから、丁度その直前にぶつかった感じですね。
–––今、何足位のスニーカーを所有されていますか?(累計足数も)
累計では1,000足位は履いてると思いますよね。でもハイテクモデルはあまり履いてないので足数的には少ない方だと思います。
–––学生時代から現在までの「マイ フェイバリット スニーカー」ベスト3を教えてください。
やっぱり1位は、小学生の頃に初めて買ったコンバースのオールスター(マルーン)。次は今でもよく履いているヴァンズのオーセンティック(ブラック)。3位はむずかしいなぁ…ナイキのエア マックス1(ファースト)、アディダスのキャンパス、スーパースター。パトリック。プーマのプーマ スウェードなどは本当によく履きましたね…。でもやっぱり、ニューバランスの576(ネービー)ですかね。ベスト3足を挙げるとすると。
スニーカーの魅力としては、履き込んで格好良くなるヤツがいい。
際立ったスニーカーは履きたくない。ただ、地味過ぎても履かない。
–––甲斐さんが考える「スニーカーの魅力」とは、何でしょうか?
僕がこう言うと弊害があると思うんですけど、やっぱりウエアの一部っていうか、全体のバランス、トータルのバランスがやっぱり一番大切だと思っているんです、スニーカーは大好きですけど。だから、スニーカーがあまり際立っていても僕はあんまり履きたくない。ただ、地味過ぎても履かない。だからやっぱり、ちょっと印象に残るようなものが一番いいんでしょうね。特に歳取ってきたから特にそうなるんでしょうけど(苦笑)、若い世代はちょっとエッジが効いてるほうがいいんでしょうね。あと、スニーカーの魅力としては、履き込んで格好良くなるヤツがいいですね。学生時代はガンガン洗ってオールスターを履いてましたんで。洗った上に、その上から歯磨き粉を塗ってました。だって洗ったらすぐ黄ばむじゃないですか。だから薄く手に取って塗って乾かすと白くなってたんで(笑)。最近の子たちってあんまりシューズを洗って履くみたいな習慣ってないですよね。製品の生産過程も変わってきているせいもあるかもだけど…あとプライスもあるんでしょうけどね。当時はオールスターが7,800円とか8,800円位する高価で貴重なものだったので。
お客さんの買い方が変わってきた感じがあります。
それは店頭に立って実際に感じる感覚として。
–––売れるスニーカーと売れないスニーカーの差はどこにあるとお考えでしょうか?
来年で5周年になるんですけど、お客さんの買い方が変わってきた感じがありますね。それは店頭に立って実際に感じる感覚として。お客さんが店頭で初めて選ぶというよりは、もう事前に情報があって来る方が結構多いです。ある程度決めてから来られている感じがあるんです。僕一個人としては、正直あんまり面白くない、せっかくお店に来てくれてるのに。これだけディスプレーやインテリアとか凝って演出しているつもりなんですが…。ウェブやSNSで見た写真の現物を確かめるだけという感じもある。だったら極端な話、ウェブショップでいい。ブランド側もその対策として、いかにSNSに乗せてどれだけバズを起こすかっていう、そっちの方が今すごく重要になってきていて…。それが売れるスニーカーと売れないスニーカーの差にもなっている。でも現状を改善するには、接客を含め、スタッフの質だったりでまた変わるんでしょうけど、今後は変えていかないと駄目でしょうね。それは各セレクトショップも同じだと思うんですよね。特に都心は異常なほどそうなっちゃってますよね。だけどまだ、地方のショップはお客さんとの距離が近い。要は店員に会いに行くみたいな感じで遊びに来るんです。接客時間ももちろん長くかけられますし、店員が「これ、本当にいいんだよ」って言うものも伝わりやすいし、リアルショップの存在価値があると思っています。
「売れるブランド」を育てることは、
僕らに課せられた使命だと考えています。
–––売れるブランドと売れないブランドの差はどこにあるとお考えでしょうか?
プロモーションがあまり上手くないブランドは、いい靴でもあまり売れない傾向も最近出てきています。いいブランドだから、もうちょっと売れてもいいのに…というジレンマもありますね。ただ、どうしても世界中で同時にたくさんの情報が得られる状況になっているので、露出するブランドほど売れる傾向があり、情報量の差が、売れる、売れない、の分岐点になっていることは多分ありますね。そこは僕らのやり方もあるんでしょうけど…むずかしい時代になっています。
–––プロモーション以外で「売れるブランド」の条件があれば教えてください
プロモーションばかりが先行していますが、やはり魅力があるプロダクトを作っているブランドだと思います、最終的には。プロモーションも大切ですが、僕ら売る側の立場からすれば、売れるブランドの条件を自分たちでも作っていかなければならない。売れるブランドにするには、やっぱりお店のスタッフが格好良く履くべきなんです。それはもう僕らが若い時も、変わらないのかなと思いますけどね。あっ、カッコイイと思わせたら勝ちなんで。お店のスタッフがプロフェッショナルであれば、靴の魅力は生で伝わるわけなんで。そこは、今後は本当にもう一回見直して、僕らもやっぱりそこのスキルを上げていかないといけないっていう。自分たちが好きなブランドだったら、お客さんにその部分を伝えないといけない。それが「売れるブランド」を育てる条件であり、僕らに課せられた使命だと考えています。
明日、パート2へ続く。