About “PUMA SUEDE VTG MIJ SILVER” Factory Development Manager Interview
via
SHOES MASTER
Web SPECIAL
https://www.shoesmaster.jp/special
Sneaker Tokyo Vol.3
“Puma as You’ve Never Seen them Before”
SHOES MASTER編集部 編著
2010年8月20日発売
The long-awaited MADE IN JAPAN is back
Special Feature 2021 SPRING
“PUMA SUEDE VTG MIJ SILVER”
拙著『Sneaker Tokyo』での取材から約10年。2021年から新たにリリースされるMIJが編集部に届いた。このフォルムを見た瞬間、懐かしさがこみ上げ、また工場を取材したいと思った。しかし、現在はコロナウイルスの影響で県をまたぐことも憚れる状況。当時取材したスタッフの意志を受け継いだ、工場の開発責任者をリモートでインタビューした。
About
“PUMA SUEDE VTG MIJ SILVER”
Factory Development Manager
Interview
–––まずMIJのアッパー素材の特徴を教えてください
弊社のある兵庫県姫路市は、姫路レザーと呼ばれるように、市自体がレザーの一大産地になっていて100社以上のタンナー(皮革製造業者)が存在しています。各社がそれぞれ独自のノウハウを持っていますし、素材であるレザーも、牛革の柔らかめのレザー、オイル感の強いレザーなど、オリジナリティのあるレザーを色々と出しているんです。そういった意味ではレザーの選択肢が多くて多様性があるんです。我々は、パーツによっては違うものもありますが、ほぼ地元の姫路レザーを使っています。
–––今回のMIJのアッパー素材は?
今回のMIJのアッパー素材としては、スウェードの毛足にこだわって採用しました。レザーは通常、問屋さん経由で買うことが多いのですが、我々はタンナーさんに直接出向いて、担当者とフェイス・トゥ・フェイスで調達しています。今度、こういう企画がやるので、こういうレザーを探していて、こういう雰囲気で作ってくれって言えるんです。今あるレザーをただ手配して探すだけではなくて、色々なリクエストを出して加工して作ってもらっています。
–––加工まですべて地元できるとはすごいですね
加工もそれぞれのタンナーさんによって得手不得手があるので、得意そうな所を選んで話を持って行きます。なのでMIJのアッパー素材は、地元姫路の豊富な選択肢と、卓越した加工技術を吟味した上で作られていることが特徴と言えます。
–––MIJと海外産プーマ スウェードのシルエットの違いはありますか?
MIJのシルエットは、ラストに忠実な立体感が出るように常に気を付けています。
–––MIJは特段にシルエットが綺麗ですよね
シルエットが綺麗っていうのは、ラストの形がきちんと表現されているってことなんです。完成した靴の姿を見ていただいたら、何となく分かるかなと思いますけど。
–––同じラストを使っても作る工場によってシルエットが異なる、と聞いたことがあるのですが
そうですね。形を整える「吊り込み」によって変わりますね。もちろん、パターン(型紙)あっての吊り込みですし、素材あっての吊り込みですけど。
–––御社がラストに沿って綺麗なシルエットの靴を作る「吊り込み」の技術があるってことですよね?
一応、そうですね(笑)。私たちも同じラストで作りますが、アッパーのパターンは独自に私が切るんです。それによって、パターンあっての吊り込みで綺麗なシルエットが実現できるんです。ドイツのプーマ本社のスタッフから「同じラストを使っているのに、なんでこんな綺麗なシルエットになるのか?何でこんなにも違いが出るのか?」って聞かれたこともあります。
–––まさに「匠の技」って感じですね
そうやってお褒めの言葉をいただいた時に考えたんですけど、靴の開発、企画っていうのは、通常はそれぞれが分業して作っているんですね。ラストを作る専門の人がいて、アッパー素材を決める専門の人がいて、パターンを切る専門の人がいてという形で分業して作っていきます。でも、プーマさんに関しては、私が最初から最後まですべての生産過程に携わって、全部チェックして作っているんです。分業ではなく全体をトータルに見て、作っていけるところが海外産(アジア)のプーマ スウェードとの差別化につながっていると思います。
–––シルエットだけでなくMIJは独特な履き心地ですよね
ありがとうございます。履き心地に関しても、やはりラストにきっちり沿った靴が作れることが一番だと思います。それと、アッパー素材の持つ柔らかさとの相性もある。その辺がしっかりできていると、足入れした瞬間にすっと入って、海外産とは違う独特な履き心地になるのだと思います。
–––MIJを生産する上で一番こだわっていることは何ですか?
重複しますけど、一番はシルエットですね。あまりかちっとしたシルエットでもなく、かといって崩し過ぎてもいないっていう。それには、素材の良さを殺さないことが大切で、温度管理をはじめ色々な工程で気を付けています。素材感もしかりですが、海外産(アジア)との違いをシルエットで出せないとMIJの意味がないので。
–––MIJを生産する上で一番苦労した所を教えてください
一番は、名前にもなっているスウェード素材の風合いをMIJらしく仕上げることですね。特にシルバーは、スウェードに合うちょうどいいシルバーってなかなか無いんです。MIJのシルバーを上品で落ち着いた感じの風合いに仕上げるには、素材を選ぶのも大変ですが、すべての生産過程でその都度、風合いを微調整しています。
–––復活するMIJをどんな方に履いて欲しいですか?
復活ということもあるので、まずお待たせしたコアなファンの方に。あと、しばらくお休みしていて、MIJを知らない方も結構いらっしゃると思うので、MIJを知らない若い方にもぜひ一度、履いていただければうれしいです。
–––最後にSHOES MASTER読者へ一言お願いします
ドイツ・プーマのアイデンティティと、日本の物づくりが融合して生まれたのがMIJです。素材、パターン、シルエットという視覚的なクオリティはもちろん、履いた瞬間に直感的に体感できる一足になっています。さすがMIJだな、メイド・イン・ジャパンだな、私たちの工場の靴だなって思っていただけるような物づくりをしています。ぜひこの機会に多くのユーザーの方に体験していただきたいと思います。本当は海外のスニーカーファンの方にもと思っていたのですが…コロナ禍がまた大変な状況で残念です。
PUMA SUEDE VTG MIJ SILVER (2021)
Silver, Black ¥18,500+tax