
Photo : Kayoko Ogawa
Text : Masahiro Minai
Edit : Shin Kawase
Cooperation : GORE TEX BRAND
To GORE-TEX BRAND
Headquarters in U.S.A.
Exploring the Secret Behind the
Comfortable Fit of GORE-TEX FOOTWEAR
ゴアテックス フットウェアの
快適さの秘密を求めて
~米国本社取材レポート~
最近ではフットウェアにおいても、その高い防水透湿性が注目されているゴアテックス。ゴアテックス ファブリクスを採用したフットウェアは、そのセールスを急速に伸ばし、グローバルで高い評価を得ることに成功。今回、アメリカのゴアテックス ブランドのヘッドクォーターと開発拠点を訪れ、悪天候にも負けない、その快適さの秘密を探った。

About GORE-TEX
アメリカのデラウェア州に本社を置く、材料科学メーカーのW. L. ゴア&アソシエイツ社は防水透湿性素材をコアとした“GORE-TEX PRODUCTS”で、ワールドワイドで広く知られている。1976年に製品化に成功し、雨や雪を防ぎ、ドライで快適な状態に保つ「耐久防水性」、汗の水蒸気は外部に排出されることから、ドライで快適な状態で過ごすことができる「透湿性」、そして、あらゆる風を遮断し、風による体温低下を防止し、身体を暖かく保つ「防風性」を兼ね備えた高機能素材として、長きに渡りアウトドアシーンで高い評価を得ることに成功。最近ではライフスタイルシーンにおいても、そのハイパフォーマンスが注目され、アパレルだけでなくフットウェアカテゴリーでも、その優れた防水透湿性を体感できるようになった。

Gore Capabilities Center
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ゴア ケイパビリティセンターで
歴史、事業内容、イノベーションを学ぶ
ゴアテックス ブランドを展開するW. L. ゴア&アソシエイツのヘッドクォーター1階にはゴア ケイパビリティセンターと呼ばれる施設が設けられており、ここでは顧客、ビジネスパートナー、新入社員、メディアを対象としたツアーを開催。同社の成り立ちやイノベーション、先端素材の可能性を学ぶことができる。

様々な分野で同社の製品が活躍していることが理解できる
ゴア ケイパビリティセンターの展示スペース。
こちらを訪れたゲストは、同社の歴史、事業内容、イノベーション、同社素材の先進性などを最終製品の展示を通じて学ぶことができる。ここには歴史を説明したパネル、実際の素材、これまでに展開してきたプロダクトを展示。今回、我々を案内してくれたのはエンタープライズ イベント&オペレーションコーディネーターのホイットニー・ショー氏。

Enterprise Events and Operations Coordinator
Whitney Shaw
会社創立、ゴアテックスの誕生、会社の飛躍をわかりやすく説明してくれたが、特に興味深かったのは、ゴアテックス プロダクトテクノロジーを発明したボブ・ ゴアがメインとなる素材のひとつであるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を伸ばそうとしたものの、何度トライしても上手くいかなかったのが、怒りに任せて素早く引き伸ばしてみると上手く延伸できたというストーリー。いくつかの発明は偶然や失敗から生まれたというが、このストーリーも、根気強く諦めなかったことが、偶然が見事に成功へと結びついたといえるだろう。
自分も実際に体験したが、熱した素材をゆっくりと丁寧に伸ばそうとすると「プツッ」という感じで千切れてしまうのに、素材の両サイドを持って素早く引っ張ると、「スーッ」と伸ばすことができたという。こちらのゴア ケイパビリティセンターでは、実際にこの素材を伸ばすことができ、ホイットニー・ショー氏がお手本を見せてくれたあと、自分もこの歴史的なエピソードを体験することができた。この延伸されたePTFEという素材は意外なところでは医療向けの製品や産業用資材などあらゆる分野の製品にも採用されている。

ホイットニー・ショーが素早く引っ張ることで、素材が切れることなく
延ばすことができるというデモンストレーションを行った。

読者はご存知のように、最近ではナイキのライフスタイルシューズにも
ゴアテックス プロダクト テクノロジーは採用されている。

Gore Archive Room
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ゴアテックス ブランドの歴史を紐解くべく
アーカイブルームへ
W. L. ゴア&アソシエイツのヘッドクォーターにあるアーカイブルーム。ここにはゴアテックス ファブリクスを採用したアパレル、そしてフットウェアの数々が保管されている。まさにゴアテックス博物館といっても過言ではなく、同社の歴史を紐解くためにも必訪のスポット。そのいくつかを紹介しよう。

今回アーカイブルームを案内してくれたネッダ モクタデリ氏。
ゴアテックス アーカイブスを完璧に管理する生き字引的な存在だ。
デラウェア州ニューアーク、バークスデール通り沿いにあるヘッドクォーターの関係者以外立ち入り禁止のエリアにアーカイブルームは存在していた。1976年に製品化に成功して以来、その優れた防水透湿性によりゴアテックス プロダクト テクノロジーは様々なブランドのあらゆる製品に採用。

マグマやラバドームとともにナイキ最初期のアウトドアシューズとして知られるアプローチは1981年のデビューで、ゴアテックス ファブリクスを採用していた(左)。ランニングシューズで最初にゴアテックスを採用したのは、1980年にリリースされたブルックスのハガーGT(右手前)。ブルックスが誇る高機能ランニングシューズで、ランナーズワールド誌のファイブスターを獲得した。ダナーは1979年、ダナーライトにゴアテックスを採用(右奥)。現在も蜜月関係は続いている。
ゴア ケイパビリティセンターにも数々のプロダクトが展示されているが、アーカイブルームに保管されている製品はよりマニアック。アーカイブルームにはアパレル、帽子や手袋などのアクセサリー類などとともに、同社の歴史を象徴するフットウェアも保管されていた。フットウェアに最初にゴアテックス ファブリクスを採用したのは1979年に発売されたダナー社のハイキングシューズであるダナーライト。そのモデル名の通り、ナイロンとレザーのコンビネーションアッパーを使用したことで、当時としては軽量な部類となるプロダクトであり、現在も継続展開されているロングセラーだ。
一方でランニングシューズではブルックスのランニングシューズ、ハガーGTが最初にゴアテックス ファブリクスを採用した。このモデルは、踵サイドにもシューレースを通すことで比類なきフィット感を実現してランナーズワールド誌の恒例企画シューズレビューで最高評価のファイブスターを獲得。ちなみにモデル名にあるGTとはゴアテックスの略だ。その後もアディダス、メレル、サロモンといった著名なブランドが比類なき防水透湿性能に注目してゴアテックス ファブリクスを採用し、その機能性を向上させつつ現在に至っている。

アーカイブルームにはアウトドアアパレルを中心に様々なアイテムが大切に収蔵されている。

バナナイクイプメントはアーリーウインターズ やマーモット、マウンテンワークス
とともにゴアテックス ファブリクスを最も早く導入したブランドのひとつ。

ゴアテックス ファブリクスを採用したLLビーンのハイカットアウトドアシューズ。

1997年にナイキからリリースされた軽量ハイキングモデルである
エア マイノットにも比類なき防水透湿性を誇るゴアテックス ファブリクスが採用された。

悪天候にも対応すべく、ゴアテックス ファブリクスが採用されたニューバランスのウイメンズ用トレイルランニングシューズであるWT910GT。

ニューバランスのランニングジャケットにもゴアテックス素材は採用されていた。

GORE-TEX LABS
Elk Mills 5
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ゴアテックス ラボで
製品開発に対する妥協なき姿勢を目撃
バークスデールの本社より車で数分の場所に位置するエルクミルズサイトとネーミングされたW. L. ゴア&アソシエイツの製造拠点の中の一施設であるエルクミルズ 5。本社のあるデラウェア州の隣のメリーランド州にあり、ゴア ファブリクス部門の研究開発と製造を行っている。この場所こそが“GORE-TEX LABS”なのである。

Elk Mills 5
こちらの施設は社外秘の設備も多く、
関係者以外は立ち入り禁止。
国内外問わず訪れたメディアは数少ないという。

まず案内されたのは、ゴア ファブリクス リソース ライブラリー。
ここでは開発された様々なファブリックが保管、管理されている。

ライトテーブルを活用して出来上がったサンプル生地に
不良個所がないかチェックする。

いくつも洗濯機が並ぶウォッシングルーム。新たに開発されたラミネートは過酷な洗濯耐久テストにより、長時間の洗濯後でも変わらぬ性能を検証している。

次にレインルームテストと呼ばれる雨が降っている状況を再現する部屋へと案内された。各メーカーから製造される発売前の最終プロトタイプの防水設計をテストする施設だ。一般的なレインウェアとしての性能を確認するレインテストと“ストームテスト”と呼ばれる横から吹き付ける豪雨を想定した過酷な環境下での使用の為に設計されたゴアテックス プロ プロダクトのテストも行われている。

ゴアテックス プロダクトを全身に着用してレインテストの体験ができる。

実際の品質テストでは表生地の撥水性を落とした状態においてウェア本来の防水設計が試験されている。写真のウェアは左半身のみ撥水性がある状態。撥水性がなくても内部への水の浸入がないことが体験できた。

次に訪れたのはバイオフィジクスラボ。 様々な気象条件化でセンサーを埋め込んだマネキンでのテストや、プロダクトをテスターが着用し、想定するアクティビティ相当の物理的負荷をかけて行うヒューマンテストが実施される。 深部体温、心拍数、発汗量などの体に関するデータを収集し科学的な分析を行い、新しい素材やテクノジーを検証する。 こうした研究開発がゴアテックス プロダクトの快適さを裏付けている。

環境チャンバーは異なる温度、湿度、風速など、地球上のあらゆる気象条件を再現できる ゴアが誇る世界でも有数の設備。案内してくれたのはエンジニアリング・R&Dテックチームの レイ・デイブス氏。

GORE-TEX FOOTWEAR
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独自構造と徹底的なテストが
快適な履き心地を生むゴアテックス フットウェア
ゴアテックス フットウェアが誇る比類なき防水透湿性能。その機能性を確固たるものとするために、様々なテストが徹底的に行われ、これらをクリアした構造、スペックのみが製品としてマーケットで展開されることになる。それらテストが行われる施設へと案内された。

靴の中に水を入れ、高速回転させるテストマシン。
遠心力で水圧をかけることにより、
水漏れの有無を確認することができる。


足を模したマシンに靴を履かせ、水に浸した状態で数万回の屈曲を繰り返すウェットフレックステスト。歩行動作による水の浸入がないかを確認することができる。センサーにより水漏れの箇所を特定して原因を究明・改善する。


防水性だけでなく、透湿性のテストも行われる。靴内部に体温程度に温めたお湯を入れ、履き口を密閉。靴全体での透湿量を測定。活動に求められる快適な透湿性能を有しているかを確認する重要なテスト。
なぜ、ゴアテックス フットウェアは靴の中をドライな状態に保てるのか。秘密はその構造にある。ゴアテックス フットウェアは、水を浸入させず、汗の水蒸気を発散させる機能を持つゴアテックス ファブリクスを、足を包みこむように靴の中に組み込んでいる。そのため、激しく雨が降る日でも足を濡らすことがなく、また、汗の水蒸気が靴の中に残りにくいため、足はいつでもドライで快適なのである。ゴアテックス フットウェアの特徴である「防水透湿」とは、水を通さずに水蒸気を通過させる機能のこと。ゴアテックス ファブリクスはその内部に微細な孔(あな)を無数に持つゴアテックス メンブレンという膜を備えており、それぞれの孔は水滴よりはるかに小さいため水が通ることはできない。一方、水蒸気が通り抜けるには十分な大きさなので、雨などの水は通さず、汗の水蒸気は外に逃がすという防水透湿性能を発揮することが可能である。防水耐久性や透湿性を確かなものにするため、すべてのゴアテックス フットウェアはゴアテックス ファブリクスを内蔵するだけでなく、徹底した品質基準に基づいて製造されている。ゴアテックス ファブリクス以外の細かなパーツについても基準が設けられ、さらに実際の着用を想定したいくつものテストが義務付けられており、このように多種多様な関門をクリアしたものだけがゴアテックス フットウェアとして製品化されるのである。そんなゴアテックス フットウェアの機能性を確保するために日々研究開発、テストが続けられている。我々が案内されたのはフットウェアの防水テストルームでは、遠心力を活用した機械なども活用して防水性、透湿性の検査も行われ、日々ゴアテックス製品の品質が保持されるよう、一切の妥協は無い。

フットウェアの防水テストルームで説明を担当してくれた
エンジニアリング・R&Dテックチームのドナ・パーナー氏
次に我々が向かったのはフットウェアラボ。ここではフットウェア アプリケーション エンジニアリーダーのロブ・ウィーナー氏が、シューズ独自のゴアテックスの使用方法を説明してくれた。1979年にダナーのダナーライト、1980年にブルックスのハガーGTといったプロダクトが、ゴアテックスがフットウェアに採用された最初期モデルとなる。この当時からゴアテックス ファブリクスをソックス状にしたブーティをアッパー内部に配することで、比類なき防水性と透湿性を両立することに成功。ユーザーからも高い評価を得ることに成功し、今でもなおこのブーティ構造がゴアテックス フットウェアのスタンダードとなっている。一方で、ブーティが内蔵されることにより、アッパーのフィット感が一般的なランニングシューズとは異なり、屈曲性を若干妨げる理由ともなった。これを解決すべく開発されたのが、ゴアテックス インビジブルフィット プロダクトテクノロジーである。

フットウェアアプリケーションエンジニアリーダーのロブ・ウィーナー氏が
ゴアテックス インビジブルフィット フットウェアの機能性の高さを説明してくれた。
ゴアテックス インビジブルフィット フットウェアは、耐久防水性、防風性、透湿性を兼ね備えたゴアテックス ファブリクスがシューズのアッパーに直接接着される構造により、一般的なスポーツシューズ、すなわち耐候性プロテクションのないシューズと同じフィット感を実現する。従来のゴアテックス フットウェアでは「ハーフサイズアップでサイズ合わせすることも珍しくなかったですが、ゴアテックス インビジブルフィット フットウェアでは、これまでと同じサイズ選びで大丈夫ですよ」と、昨年の春に訪れたアメリカの著名なランニングスペシャリティチェーンであるロードランナースポーツのサンタモニカ店のスタッフが述べていたように、一般的なランニングシューズと同様のサイズで問題ない場合が多い。

現状の機能性に満足することなく、進化を続けるゴアテックス フットウェア。防水性プロテクションをキープしつつも、インビジブルフィットフットウェアはアッパーとの間に隙間がないため保水せず、濡れた場合の乾燥時間も短縮。さらに透湿性と軽量性を高めるだけでなくアッパーや踵のフィット感、前足部の屈曲性など、ランニングシューズが必要とする機能性を追求している。

左が一般的なブーティ構造、右がインビジブルフィット、アッパーとライニングに隙間がないことがわかる。
さらに前足部の屈曲性も改善されており「実際の工場と同等の生産設備を有するこのデザインラボではゴアテックス フットウェアのプロトタイプを開発して生産することができます。ここで徹底的な検証を行い、機能テストを経て、アジア地域のゴア認定の靴工場で本生産へ向けた技術導入がアプリケーション エンジニアチームにより行われることとなります。我々は現状に満足することなく、常に機能性の向上にトライしています」とロブ・ウィーナーが語るように、ゴアテックス フットウェアは、常に進化を続けているのである。

こちらのラボではプロトタイプシューズを製造するための多種多様な設備を備えている。

フットウェアラボのウォールには“THE FIRST STEP TO THE FIRST STEP”とある。ユーザーの快適な一歩の為に、挑戦の最初の一歩はここの場所から始まっている。
GORE-TEX 本社のキーメンバーからSHOES MASTER読者へメッセージ!

ゴアファブリクス ノースアメリカ マーケティングリーダー
マイケル・アダムス氏
「お気に入りゴアテックスフットウェアは、ゴアテックス インビジブルフィット プロダクトテクノロジーを採用したロードランニングシューズのナイキ ペガサス 41 ゴアテックスです。カジュアルにも、ランニングや軽いハイキングにも履けるところがいいですね。どんな服装にもどんな環境にも合い、驚くほど快適で、どんなときでも悪天候から身を守ってくれます。アメリカのオフィスにシューズ・マスターチームをお迎えすることができ、大変光栄でした。日本で私たちの製品がこれほど多くの方に愛されていることを知り、大変嬉しく思います。ゴアテックス ブランドへのご支援、誠にありがとうございます」

ゴアテックス フットウェア プロダクトスペシャリスト
エリック・シュライ氏
「私が現在気に入っているゴアテックス フットウェアは、日常使いに適した、アクティブなライフスタイルにも合う、あらゆるタイプのスポーツスタイルのスニーカーです。ゴアテックス フットウェアの汎用性が本当に気に入っています。仕事にもちょっとした用事にも、ちょっとしたハイキングやランニングにも使える、見た目も素敵な一足です。軽くて履き心地が良いだけでなく、雨の日や濡れた道を歩いても足をドライに保ってくれます。この記事を読んで、W. L. ゴア&アソシエイツ社とゴアテックス フットウェアについてもっと知っていただけたら幸いです。私は13年以上香港に住んでいたことがあり、ゴアの仕事で日本を頻繁に訪れて、様々な日本のカルチャーに触れられたことは本当に幸せでした。シューズ・マスター読者のみなさま、これからもゴアテックス ブランドをよろしくお願いします」
到着した日は記録的な大雪だった。ほぼ毎日走る自分は、到着日の夜こそ大雪だったため、ホテルのスポーツジムのトレッドミルで走ったが、翌日は残雪の残るなか、アディダス スーパーノヴァ ゴアテックスで走ることに。ゴアテックスの優れた防水透湿性能により、シューズ内部はドライに保たれ、快適に日課としている6キロランを無事に終えることができた。期せずしてゴアテックスフットウェアの機能性を体感することとなったのである。

Photo : Masahiro Minai
残雪が残るデラウェア州ニューアークの街で、快適に走ることができたのは、
アディダス スーパーノヴァ ゴアテックスのおかげだった。
取材協力:
GORE-TEX BRAND
www.gore-tex.com/jp