Photo : Kazumasa Takeuchi (STUH)
Edit &Text : Shin Kawase

About UGG®
Why were you UGG® then?
Shigeyuki Kunii(mita sneakers)
Interview

ミタスニーカーズ+ウィズリミテッド+アグ®。2019年11月、それまでには考えられなかった組み合わせのトリプルネームのコラボレーションモデルが登場した。その意外性と共に反響は大きく、発売されると即日ソールドアウト。スニーカーファンはもちろん、スニーカー業界関係者を唸らせる結果となった。このいきさつを国井栄之氏に聞いた「なぜ、あの時アグだったのか?」。

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UGG® × WHIZ LIMITED × mita sneakers
UGG® BOOTS 805 × Classic WP
Birth secret story

もちろん知っているブランドではあったけど、
ミタスニーカーズとしてはリンクすることは
無いと思っていたのがアグでした

–––まず、コラボレーションする前のアグに対するイメージは?
サーフカルチャーをバックボーンにしているけど、やっぱりウィメンズ色が強いのと、メンズで履いててもストリートっていうよりは、もうちょっと違うジャンルの人たちが履いているというイメージでした。スニーカーを販売している人間もみんな知ってはいるんですけど、履いたことがなかったですし、直接取り扱うっていう機会すら僕らはなかった。スニーカー屋ですけど、スニーカー以外では、ティンバーランド、レッドウイング、ダナーなどの定番モデルはひと通り試しましたがアグのシープスキンブーツだけは履いたことがなかったですね…。スニーカー屋ってどうしてもソールユニットでモノの良し悪しを判断しちゃうので、カジュアルシューズなインソール形状&ソール構造っていうのが、僕らとしては、うーんって感じでやっぱり抵抗があったんです。これはもちろんスニーカーじゃないっていうか。なので、知っているブランドではあったけど、ミタスニーカーズとしてはリンクすることは無いと思っていたのがアグでした。

–––そんなアグとコラボレーションすることになった経緯を教えてください
一番大きな理由は、他スポーツブランドで一緒にプロジェクトをやっていた方々が、デッカーズジャパン※に転職してアグに携わる人が増えたことですね、ホカ オネオネと同様に。ホカ オネオネを取り扱ったのは、スニーカー屋の中だと一番早かったのですが、フィナムランニングクラブの足下に影響を受けながら最終的な取り扱いの決め手は同じなんです。今回も旧知の仲である友人が転職してアグの担当になった。その担当から、取扱いうんぬんの前に一回試しに履いてみてって、シープスキンブーツを渡されたのが最初ですね。
※デッカーズは、米国のアグ、テバ、ホカ オネオネなどのブランドを世界で展開するフットウエアカンパニーで、デッカーズジャパンは日本支社

–––やっぱり「人」だったんですね
そうです。その担当から、アグをどうにかミタスニーカーズでって話になって…。忌憚なくアグをどうしたらいいか、もう全部文句を言ってくれって言われました。これってお得意のパターンなんですが(苦笑)。なので、まず履き心地の問題、ソールユニットのことを指摘しました。でも履き心地の前に今まで自分の中にアグが存在したことがないこと。玄関にアグがある友達が一人もいないっていう話も。サーフィンやってる友達ですら、履いてるかって聞いたら履いてなかった。という感じで全部正直に伝えました。

ミタスニーカーズが求めているのは、
どっちでもないんだよねってお断りしました。

–––いくら人で繋がっていても最初はダメだった?
はい。しばらくして、スニーカータイプを出すので、それの意見を聞かせてほしいって連絡があったんです。それが今日履いている“CA805”のプロトタイプです。でも、スニーカータイプのシューズもアグらしくなくて違うかなと。ソールユニットは、すごくいいなと思いましたけど、まだ改善の余地はあるし、スニーカー屋の僕らとしては、アグがスニーカーに歩み寄ったシューズを提案するっていうよりは、最初はやっぱり、アグのアイデンティティを知ってもらいたかったんです。なので、既存のシープスキンブーツはソールユニットの問題があるし、ミタスニーカーズが求めているのは、どっちでもないんだよねってお断りしました。そしたらグローバルチームのスタッフや社長まで来てくれて話をしました。その結果、スニーカー屋が売りたいアグってこういう靴だと思う、というのを自由に作らせてって言ったら、アグも承諾してくれてコラボレーションすることになったんです。そこから良くも悪くもストリートのカルチャーの人はアグを通ってないので、逆に言ったら新鮮に映るかもしれないという考えに変わっていきました。

一度も履いたことがなかったので
素足で履くものっていうことも
知りませんでした(苦笑)。

–––それであのトリプルネームのモデルが誕生することに
シープスキンブーツをベースにコラボレーションモデルを作ると言っても、一度も履いたことがなかったので素足で履くものっていうことも知りませんでした(苦笑)。サーフィンして海から上がって足が冷えない保温性と速乾性。ちゃんと理にかなった機能性を持たせているから、このシープスキンなんだっていう説明を受けました。それで初めて足入れしたんですが、その時に一番気になったのが、やっぱりソールユニットが靴屋からすると厳しくて…。やっぱりこれじゃ長時間は履けないっていうか。シープスキンブーツの本来のアッパーの機能性とかはめちゃくちゃいいなと思ったんですけど。それでウィズリミテッドの下野くんに相談しました。多分僕だったらクラシックなシープスキンブーツとスニーカータイプのソールユニットをハイブリットして終わりだったと思います。それを、下野くんがデザイン的にもソールの上に波形のガードがあった方がいいとスニーカータイプのガードをうまくサンプリングして付け足したんです。

UGG® × WHIZ LIMITED × mita sneakers
UGG® BOOTS 805 x Classic WP

僕らスニーカー屋は、スニーカーテクノロジーのソールユニット、ツーリングに対するこだわり、下野くんはアグっていうブランドのもともとのオーセンティックな魅力をスタイリングと絡めてトータルで考えるのでお互いの着眼点が違うんです。

ここ数年の中では一番良かった。
久しぶりにトリプルネームでやる意味、
意義が果たせたかなと思っています。

–––それでファーストサンプルが上がってきたんですね
それが早くて4カ月くらいで上がってきました。スポーツブランドだったら絶対に考えられない。やっぱりカジュアルブランドのタイムラインってすごいと思ったし、スピード感が違うなと思いました。しかも出来上がりも完璧で。ちょっとだけ、ジッパー部分を修正したりはしましたけど。今回のコラボレーションモデルに関しては、既存のモデルに対しての素材変え、色変え、少しのパターン変え以上のことをさせてもらったので、ここ数年の中では一番良かった。久しぶりにトリプルネームでやる意味、意義が果たせたかなと思っています。

–––それで発売したらすぐにソールドアウト
そうですね…本当に良かったです。やっぱりブーツなので税抜きで2万5000円。そこそこの値段になるので。

–––どういう方が購入されましたか?
スポーツブランドのスニーカーを普段から買っている方で、ミタスニーカーズが定期的に提案するモノに対しても、受け入れてくれるお客さんたちが多かったですね。明らかに今までのアグと違うので、履いてみたいって思う興味津々なスニーカーファンの人たちも買いに来ましたね。逆に言ったら、アグを履いてこれを買いに来た人たちはいなかったです。

僕の使命としてはオーケー
スニーカーファンにアグが届けられた

–––アグファンの方はいなかった?
いなかったですね。なので、逆に僕の使命としてはオーケーだと。スニーカーファンにアグが届けられたので。アグはやっぱり圧倒的にウィメンズの客層のパイが大きいのに、今回のコラボレーションモデルは圧倒的にメンズだったのですが、ウィメンズの引きがとにかく強くて改めてそのブランド力を実感しました。ウィズリミテッドやミタスニーカーズを知らないような人が飛びついてくれて大きな反響があり、発売日に完売したんですけど、その後も継続して電話で問い合わせがあったのは女性からでした。

–––あらためて他メーカーにはないアグの強みとは?
やっぱりアッパーの自由度はすごいですね。スポーツブランドのスポーツシューズだとアッパーとツーリングのバランス全てを計算して作っているので制限が多いですけど、カジュアルブランドはスポーツブランドと比べると、そこまでない。だから、色々なブランドからリリースされているコラボレーションも基本モデルをいじってるっていうよりは、アッパー全部のデザインを新規で起こしているものが多かった。そこはやっぱり、スポーツブランドにはない強みですかね。あとはさっき言ったサンプルが上がるまでの早さ。スピード感は本当に強みだと思いますね。

–––逆にアグに惜しいと思うところはありますか?
やっぱりカジュアルシューズなので、例えばフットベットのアーチがなかったりすること。例えば今履いているスニーカータイプのCA805で言えば、クッショニングのソールをつけているけど、内側へのオーバープロネーション、倒れ込みに対しては弱いなと思います。ソールユニットをわざわざいじる必要はないですけど、フットベットだけでも改良すると多分だいぶ違うだろうなとは思います。今後その辺が改善されると完璧だと思いますね。でもそれをアグが必要としているかしていないかは分からないですけど。

–––今シーズン、ミタスニーカーズで販売するモデルを教えてください
まず、トリプルネームでリリースしたモデルをインラインモデルにした、CA805 クラシックウェザー。ウィズリミテッドとのコラボモデルで作らせてもらったもののソールの意匠にカラーを追加して、もうちょっとポップな仕上がりになりながらコラボモデル同様に防水仕様になっています。2色展開でブラックもあります。ブラックはもう一度トリプルネームをやるのであればリリースしたかったカラーで、トリプルネームを買った人もブラックは出ないんですか?って、よく聞かれてました。汎用性で考えたらブラックだと思うけど、トリプルネームの時に買えなくてアグっぽいって言ったら、やっぱりこっちのブラウン(チェスナット)ですね。

CA805 CLASSIC WEATHER

 

次がCA805 スピル シーム。もともとア ベイシング エイプとアグのコラボレーションで、これに近しいものが出てて。実際に履いてみたら、すごく履き心地も良くて。スニーカータイプのCA805よりアグである理由がめちゃくちゃ詰まっていたので迷わずセレクトしました。

CA805 SPILL SEAM

 

それとスニーカータイプのプロトタイプであるCA805のジップ メッシュタイプになります。結局このプロトタイプがなければ、トリプルネームの発想もなかったので、CA805の存在は大きいですね。ソールの上のサイド部分にある波形のガードをトリプルネームにも入れているので。

CA805 ZIP MESH

 

スニーカー屋としてのプライドがあるから
売れればなんでもオーケーという
スタンスは僕らにはない

–––ミタスニーカーズでアグとは、ちょっと不思議な感じがします
個人的にもまだちょっと不思議な感じもあります、これだけアグを展開するっていうことが。僕らって、自分たちがある程度知識があるものを僕らなりに咀嚼してコラボレーションモデルを作ったり、セレクトしてお客さんに提案させてもらっているつもりなんです。今回のアグに関しては、履いてもないし、知識や情報もないどころかアンテナも立ててなかった。でもやっぱりなんでもそうなんですけど、何か好きになったり興味を持ったりするキッカケって結局は「人」なんだなって。それで興味を持ってアグっていうブランドを知れば知るほど、スポーツブランドで何か提案することとは、また違うやり方があった。でも、今回チョイスしたモデルは、スニーカーテクノロジーが入っていて、スニーカー屋として提案できるアグをセレクトしています。シープスキンブーツの大定番が一番売れると思うんですけど、うちはあえて取扱いをしない。それはスニーカー屋としてのプライドがあるから。売れればなんでもオーケーというスタンスは僕らにはないので。

–––今あらためて、アグの魅力を一言でいうと?
いわゆるスポーツブランドとは一線を画す、カジュアルブランドだからこその魅力なんじゃないかと。スニーカーという言葉の幅として今はアグまで広がったかなと思います。今まではスポーツブランドだけのものだったのが、ドメスティックブランドが出てきたり、アウトドアブランドが台頭してきたり、カジュアルブランドまでスニーカーの幅が広がった。僕たちが自信を持ってお客さんに紹介できるカジュアルブランドがついに出てきたっていう。

–––今後、スニーカー市場でアグはどんな存在になっていくと思いますか?
今、スニーカーの選択肢がすごく多いような感じだと思われていますけど、コンシューマーの人たちが飛びつくモノって実はすごく狭くなってきちゃっているんです。各ブランドの売れ筋モデルも決まっているというか。そんな中、スニーカーの選択肢としてアグが加わると、もっと他のブランドも可能性が出てくると思います。キーンが出てきて何かが変わったのと同じように。僕が子どもの頃は、ナイキっていうより、アディダス、プーマだったけど、ナイキが出てきてスニーカーゲームが変わった。だからアグが出てきたことによって、またアグに続く何かも出てくるかもしれない。そういう意味でスニーカーシーンにおいてのゲームチェンジャーな感じのポテンシャルは秘めていると思います。

INFORMATION
mita sneakers
東京都台東区上野4-7-8 アメ横センタービル2F&1F路面店
03-3832-8346
www.mita-sneakers.co.jp

 

UGG® 2020 Autumn & Winter
Best Selection 1/3
“CA805 CLASSIC WEATHER”

アグ®の2020年秋冬コレクションの中から編集部がセレクトした3モデルは、偶然にもミタスニーカーズの国井栄之氏がピックアップしたモデルと同様だった。やはりスニーカーファン目線でアグ®のモデルを選ぶとこうなるのだろう。ベスト3モデルを紹介する。

UGG® 2020 Autumn & Winter
CA805 CLASSIC WEATHER

BLACK TNL

UGG® 2020 Autumn & Winter
CA805 CLASSIC WEATHER

CHESTNUT

アグ®の新定番モデルとなった“CA805”シューズの超軽量クッションソールに加えて、アグ®のアイデンティティであるクラシックブーツをハイブリッドしたニューモデル。発案は、ミタスニーカーズの国井栄之氏とウィズ リミテッドの下野宏明氏。着脱も簡単なサイドジッパーには、止水テープを使用したガゼットジッパーを採用することで雨や小雪が降っても安心な防水仕様となっている。
26,000円+税

UGG® 2020 Autumn & Winter
Best Selection 2/3
“CA805 ZIP MESH”

UGG® 2020 Autumn & Winter
CA805 ZIP MESH

WHITE / SEAL

UGG® 2020 Autumn & Winter
CA805 ZIP MESH

BLACK TNL

UGG® 2020 Autumn & Winter
CA805 ZIP MESH

MOSS GREEN

アグ®の本社がある米国カリフォルニア州サンタバーバラの市外局番(805)からネーミングされた人気定番モデル“CA805”。そのCA805シリーズから、メッシュ素材のアッパーとジップ、クッション性の高いソールを組み合わせたスニーカー、“CA805 ZIP MESH”(ジップ メッシュ)がリリース。初めてアグ®を購入するならお勧めの定番モデル。
18,000円+税

UGG® 2020 Autumn & Winter
Best Selection 3/3
CA805 SPILL SEAM

UGG® 2020 Autumn & Winter
CA805 SPILL SEAM

CHESTNUT

UGG® 2020 Autumn & Winter
CA805 SPILL SEAM

BLACK TNL

滑らかなスエードのアッパー、シープスキンのスピルシーム、リッチな天然ウールのライニング、タスマンブレイドのヒールタブなどアグ®らしさが詰まった汎用性の高いステートメントスニーカーが登場。1 日中クッション性が持続する“Treadlite by UGG™”アウトソールを採用しているので快適な履き心地を提供してくれる一足に仕上がっている。
20,000円+税

INFORMATION
デッカーズジャパン
0120-710-844
https://www.ugg.com/jp/

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