Photo : Masataka Nakada (STUH)
Edit & Text : Shin Kawase

About 2021 Fall / Winter “WAVE MUJIN TL”
Takeshi Saito(Mizuno Sports Style)
Interview

ミズノが世界に誇るスポーツテクノロジーを現代のライフスタイルシューズとして昇華させるミズノスポーツスタイル。昨今では、海外でも話題となったアーティストの空山 基氏との共作をはじめ、名立たるファッションブランドや人気ショップとの希少なコラボレーションモデルが注目されている。今回は、2021年秋冬コレクションで登場したインライン(一般的な販路で広く流通するモデル)の中にある秀逸なモデルを紹介する。

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About 2021 Fall / Winter
Inline Model
“WAVE MUJIN TL”

2021年秋冬コレクションのインラインモデルを手掛けているのは、ほぼすべてのコラボレーションモデルを担当している齊藤健史氏。派手なコラボレーションモデルに目を引かれがちだが、インラインモデルはブランドの「今」を凝縮し、技術の粋を集めた渾身のプロダクトなのである。スポーツブランド色が強かったミズノの印象をスタイリッシュなイメージへと変革し、ミズノスポーツスタイルの礎を築いた齊藤氏に新作インラインモデルの詳細を取材した。

Takeshi Saito (Mizuno Sports Style)
齊藤健史(さいとう たけし)

ミズノ株式会社 グローバルフットウエアプロダクト本部・企画部ライフスタイル企画課

1980年、千葉県生まれ。中学・高校で陸上部に所属し、現役オリンピックコーチの指導のもとハードルで世界を目指すが、アスリートをサポートする側に回ってシューズを開発することを決意。大学、靴の専門学校を卒業後、ナイキジャパンに入社。10年在籍した後、2017年にミズノに入社。ランニングシューズを担当しながら、ニューレーベル“rhrn”(アールエイチアールエヌ)を立ち上げ、現在は、ミズノスポーツスタイルのインラインとコラボレーションモデルを手掛けている。

–––2021年秋冬のインラインモデルの新作を教えてください
ウエーブムジンティーエル(WAVE MUJIN TL)といいます。

–––ムジンっていうのは?
ムジンというのは、パフォーマンスのトレイルランニングシューズで使っているモデル名になります。このウエーブムジンティーエルは、ソールに最新のトレイルランニングシューズのソールを採用して、アッパーに2007年にデザインされたものの商品化されなかったデザイン画を基に作成したアッパーの2つを合わせたハイブリッドモデルになります。

–––なぜ2007年当時のデザインを採用したのですか?
このデザインって、僕らが今いいフィードバックをもらってるウエーブライダー10と同じ時代に、世界的なフリーランスのシューズデザイナー、トゥアン・リーさんがデザインしたものなんです。

–––有名なトゥアン・リーさんデザインなんですね。2016年に米国ポートランドのご自宅で取材しました
そうだったんですね(驚)。尊敬するトゥアンさんが当時残したデッサンをどうしても現代に蘇らせたかったんです。トゥアンさんはウエーブライダー1をデザインされて、現在もミズノの象徴的なシューズのライダーシリーズの起源をつくった方でもあり、ミズノと長い関係性があって、私たちにとってすごく大切な存在なんです。

–––そうなんですね。デザイン画はミズノの資料室に眠っていたんですか?
いえ、ミズノの資料室にも数点あるんですけど、2019年の夏にトゥアンさんのポートランドのご自宅に直接私がお邪魔して頂いて来たものなんです。トゥアンさんの過去のアーカイブに非常に興味があったので…。トゥアンさんって1日に何十枚もデザイン画を書かれる方で、デスクの上にもデザイン画の山があったんですけど、それ以外にもデザイン画を入れた段ボールが何十箱もあって…。もっと見たければ、もっといっぱいあるよって言ってくださって。世には出ることはなかったけど、僕にとっては宝の山だったんです。そこでほぼ1日探して、この一枚を採用させてもらったんです。

Design drawing by Tuan Le (2007)

–––そうだったんですね。トゥアンさんのご自宅はどうでしたか?
ポートランドは、家一軒一軒が大きいんですけど、その中でもトゥアンさんのご自宅はものすごく大きな家でもう圧巻でした。ガレージを開けると、希少なフォード マスタングのファストバックがドーンとあって…。それも僕の憧れのフルオリジナルがあって。僕は靴よりも何よりも、まずそっちに目がいっちゃって(苦笑)。トゥアンさんすごいですねって、これフルオリジナルだねって言ったら「エンジンも当時のそのまま生かしてんだよ」という具合でしばらく車談議になりました。その奥に行くと、飛行機の模型がぶわーっと並んでいて、模型が大好きだというお話を伺って、靴に行き着くまで時間かかったんですけど(笑)、子どもの心のまま大人になったっていう言葉が本当にぴったりな方でしたね。

–––それは濃密な時間でしたね
はい。トゥアンさんがデザイナーとして一番長い付き合いの会社がミズノだそうで、トゥアンさん自身もすごく思い入れがあるそうなんです。やれることは何でも言ってという感じで。シューズデザイナーとしても非常に尊敬しているんですけど、すごい人格者なんです。とても優しい方で、一人の人間としても尊敬できる方です。

via
SHOES MASTER web special
(Published February 2016)
Future of new sneakers by KEEN
Shoes Product Designer Tuan Le
Photo: Kazumasa Takeuchi (STUH)

2015年の秋、キーンのオフィスと工場を取材するために我々編集部はアメリカ・オレゴン州ポートランドを訪れた。当時、フリーランスのデザイナーとしてキーンのシューズも手掛けていたトゥアン・リー氏の自宅も訪問。シューズデザイナーとして数々のヒット作を生み出してきたトゥアン氏。オフィスの壁面には、オリンピックなどで活躍したトップアスリートから寄贈されたサイン入りシューズが多数飾られていた。

–––そのトゥアンさんデザインのアッパーを使ったウエーブムジンティーエルついて教えてください
グレーとホワイトの2タイプありまして、構造自体はどちらもほぼ一緒になります。デザイン画が描かれた2005年から2007年位って、トレイルランニングが流行し始めた時期で、その時代の特徴として横ブレやサポート力を向上させるために、サイド部分にジグザグのウェビングテープが貼ってあるんです。今はもうゴアテックスなど素材自体がかなり強くなって、ぶれなくて透水性もないような素材を使えるんですけど。当時は素材をプラス補強することによって、足ブレを防ぎ、怪我も防ぐ機能、デザインがウエーブムジンティーエルの特徴になりますね。

あと、ここは僕らのアレンジなんですけども、2タイプともシュータンにポケットを付けて、ホワイトに関してはシューレースロックを付けているんです。ミズノスポーツスタイルなので普段履き用ですが、ソールはパフォーマンスのトレイルランニング用のウエーブムジン(WAVE MUJIN)ソールなので、グリップ力があって山でもいけるトラクションがあるのがポイントですね。ソールのラバーを見てもらえれば、思い浮かぶ方も多いかと思うんですけど、タイヤで有名なミシュラン製のラバーを採用しています。アーバントラベラーじゃないですけども、すぐれた機能面もすべてデザインとしても見せられればいいなと思っています。

あと、カラーリングに関しては、アーティファクト(ARTIFACT)をカラーコンセプト、カラーパッケージに設定しています。アーティファクトとは、日本語に直すと人工物とか、人工的に作られたもの、という意味です。人為的に手を加えられた自然物のアート作品である大理石の彫刻からインスパイアされ、無機質なカラーリングに落とし込んだアーティファクトパックとして、ウエーブライダー10と一緒にその世界観をカラーリングで表現しました。アッパーの素材は、2005年から2007年当時の雰囲気が醸し出せるようにニット編みのメッシュではなくて、ウーブン編みのメッシュで耐久性が高いものを使用しています。

ARTIFACT PACK
WAVE MUJIN TL & WAVE RIDER10

–––今回は色々な意味でのハイブリッドモデルになりましたね
そうですね。ミズノはスポーツブランドとしてパフォーマンスプロダクトをメインに色々と展開しています。中でもランニングシューズをご存知の方はいらっしゃると思うのですが、今回のソールに使用したトレイルランニングカテゴリーも存在していることは知らない方が多いと思うんです。なので、ウエーブ ムジンティーエルを機にミズノのトレイルランニングを知ってもらえるきっかけになればという想いもあります。

Mizuno Sports Style
2021 Fall / Winter
Selection

WAVE MUJIN TL
White / beige / brown, Gray / navy / white

WAVE MUJIN TL
White / beige / brown
¥19,250(10月発売予定)

WAVE MIJIN TL
Gray / navy / white
¥20,350

WAVE RIDER 10
Gray / white
¥18,150

2006年に発売されたウエーブライダーシリーズ10代目の復刻モデル。オリジナルディテールが忠実に再現されたウエーブライダー10は、履き心地を追求して開発された「スムーズライド」を搭載したモデルで、ミズノのイノベーションが飛躍的に進化したウエーブライダーの代表作のひとつ。2020年にリリースされたデンマーク・コペンハーゲンのファッションブランド、ウッドウッドやビームスとのハイクオリティなコラボレーションモデルがスニーカーファンの間でも話題になった。

SKY MEDAL S
Mustard / white, Light gray / gray, Dark gray / gray
¥15,400

1980年代から1990年代初頭にかけてミズノランニングシューズの象徴だったメダルシリーズ。そのメダルシリーズのトレーニングシューズとして1990年に発売されたスカイメダルトレーナーの復刻モデル。2018年12月にKAZOKU名義でウィズリミテッド&ミタスニーカーズのベースモデルとしても一躍脚光を浴びた。機能美からなるスタイリッシュな名作。

WAVE RIDER1 S
Gray / white, Navy / white
¥15,950(11月発売予定)

1997年に登場した初代ウエーブライダーの復刻モデル。ウエーブライダー1は、ミズノが満を持してリリースしたが「足より靴箱にフィットする靴みたいだ」と当時は米国メディアに酷評された。しかし、約20年の時を経て、ミタスニーカーズの国井栄之氏が復刻を熱望。2018年2月にKAZOKU名義第1弾モデルとして復刻されると、国内外ともにすべて即ソールドアウトし、当時のリベンジを果たした。ミズノの歴史を語る上で欠かせない一足。

 

Mizuno Sports Style
2021 Fall / Winter
COLLABORATION

SORAYAMA

Coming soon…
White Mountaineering 
Graphpaper
beautiful people
BEAMS

ミズノスポーツスタイルの2021年秋冬インラインモデルを先に紹介したが、もちろんコラボレーションモデルもリリースされる。海外でも話題となったアーティストの空山 基氏との共作第2弾モデルをはじめ、ファッションブランド、セレクトショップとの希少なコラボレーションモデルが続々と登場する。空山氏との第2弾モデル以外は、発売日が決定次第、随時紹介していくのでお楽しみに。

Mizuno Sports Style 2021 Fall / Winter COLLABORATION
HAJIME SORAYAMA × Mizuno
“WAVE PROPHECY SORAYAMA” Vol.2

ウエーブプロフェシーソラヤマの第2弾モデル。2021年2月に発売された第1弾モデルは、高額にもかかわらず国内外で発売後すぐに市場から消えた幻のモデル。3分でソールドアウトしたブラジルではウエーブプロフェシーが市民権を得ていて、ウエーブプロフェシーを買うためにローンが組めるほどステータスシンボルになっているそうだ。地球の反対側でも熱烈に支持される空山基、ウエーブプロフェシー、恐るべし。今回はブラッククロームで登場。

半透明のアッパーには透過性のある樹脂を採用し、ブラックのランバードロゴを配して踵部にはメタリックブラックのパーツを擁し、「SORAYAMA」ロゴが空山氏の意向でソール内側に施されている。ソールは、ミズノが独自に開発したソールユニット、インフィニティウエーブを空山氏監修のもとアップデートし、屈曲性の向上と軽量化を図り、宙に浮いているスニーカーをイメージしてデザイン。アウトソールには大きな空洞を設け、ミッドソールには半透明のパーツを組み込んでいる。38,500円

取材協力:
ミズノ株式会社

INFORMATION
ミズノお客様相談センター
0120-320-799
www.mizuno.jp/mizuno1906/

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