Photo : Soma Doi (STUH)
Interviewer & Edit & Text : Shin Kawase

New Balance 580 GTX
born from Tokyo street culture
HECTIC × mita sneakers (2000)→
MASTERPIECE SOUND × Hombre Niño
× mita sneakers (2023)

今年のニューバランスは、春夏コレクションからMT580をフィーチャー。MT580は、1996年にオフロード用ランニングモデルとして誕生するも、2000年代に東京のストリートシーンから熱烈に支持され、世界中に広まったニューバランスの中では異色な存在。その源泉となったのがヘクティク×ミタスニーカーズだ。「あのコラボレーションがなければ、今の自分は絶対にない」と国井栄之氏が断言するほど特別な存在、MT580の最新作が届いた。

このエントリーをはてなブックマークに追加

Shigeyuki Kunii (mita sneakers)
YOPPI (Hombre Niño)
Naotake Magara (MASTERPIECE SOUND / A-1 clothing)

MASTERPIECE SOUND × Hombre Niño × mita sneakers
580 GTX

国井栄之 / ミタスニーカーズ クリエイティブディレクター
1976年、東京都生まれ。10代後半にカーレーサーを目指してレーシングチームに所属するが、道半ばでレーサーを断念。1996年、スニーカーと車の構造に共通項を見出し、当時では概念すらもなかったコラボレーションを具現化するため、スニーカー業界の門を叩く。ミタスニーカーズに入社2年目には会社にも内緒の直談判により、当時は未知であり、現在ではポピュラーとなったコラボレーションを実現。その後、クリエイティブディレクターに就任し同店を率いる立場になりながらも、スポーツ・アウトドア・ファッション・ラグジュアリーに至るまで、様々なメーカーやブランドとのコラボレーションやインラインのディレクションを数多く手掛けている。

YOPPI(江川芳文)/ オンブレ・ニーニョ
1972年、東京・経堂生まれ。15歳よりプロスケーターとしてのキャリアをスタートさせ単身で渡米。10代の後半は東京とアメリカ西海岸を往復する生活を送る。プロスケーターの傍ら1994年、真柄氏と一緒にヘクティクを裏原宿にオープンさせ、2012年からオリジナルブランドのオンブレ・ニーニョを設立。国内外問わず、様々なブランドやアーティストとの協業を果たし、裏原宿を中心とした日本のストリートカルチャームーブメントを牽引。2015年春夏シーズンからはエクストララージのデザイナーとして活動している。

真柄尚武 / マスターピースサウンド/ A-1クロージング
1967年、東京・下北沢生まれ。大学時代からレゲエDJクルーのマスターピースサウンドを結成し、DJ活動を始める。卒業後、原宿の古着屋「ビンテージキング」で販売兼バイヤー担当として勤務。買い付けは主にニューヨークとLAで、1年の大半を過ごす。6年に渡って本場のストリートシーンに身を置いた後、1994年にYOPPI氏とヘクティックを立ち上げる。現在は、マスターピースサウンドのウエアブランドも手掛け、セレクトショップ、A-1クロージングのディレクターを務める。DJとして、また裏原宿の仕掛け人として、多方面でその名前は知られ、90年代より東京のストリートカルチャーを牽引する存在。

「580」は、携わっている人々の素晴らしい
関係性から生まれたモデル

(国井栄之 / ミタスニーカーズ)

–––まず580に注目した経緯を教えてください。
国井 1997年頃、当時のインラインとして発売された580は現在のようなポジションではなく、最終的にはワゴンセールで販売していました。でも自分を含めて、ミタスニーカーズのスタッフはみんな履いていましたし、局地的な身内流行りはあったと思うんですけど。ある時、普段来ないような海外のグループが来店して580をこぞって買っていったんです。その数日後、YOPPIさんから連絡があって「ヘクティクをリニューアルするから、そのタイミングで580を追加であるだけ欲しい」と相談されたんです。これにはちょっとしたエピソードがあって、あの時に580を買っていってくれたのって、ニューヨークのスケートクルーだったんじゃないか?としばらく引っ掛かっていました。その後のスケートボード誌や写真集で580を履いているエーロン(エーロン・ボンダロフ)とジオ(ジオバーニ・エステベス)の姿があって。そんな記憶も忘れかけていた2014年に真柄さんと対談させて頂いた時に「ミタスニーカーズに行ったのはシュプリームチームに間違いないないよ。僕らが履いているの見て、それどこに売ってんだって聞いてきたから」って教えてもらって。その時に580の断片的な記憶とその後の光景が経緯として、自分の中で繋がったんです。

–––当時、DJ MUROさんも好んで580を履いていたと聞きました
YOPPI 僕もMUROくんが履いているらしいと聞いて、580は間違いないって、それがお墨付きになったんですよ。当時、ミタスニーカーズには、そーっとオファーしたつもりが、周り全員にバレてました(笑)。
真柄 そうだね、日本における580ムーブメントのそもそもの走りはMUROくんだったと言えるかもね。
国井 580の前身モデルは585なんですけど、日本企画で、日本改良品版としてリリースされたのが580なんです。なので海外ではまったく入手できないんですが、日本のどこかで入手して履いていたMUROさんは流石の目利きですよね。

–––ヘクティク×ミタスニーカーズ第1弾(2000年12月)の反響と、その後の状況について教えてください
国井 ヘクティクの雑誌広告に登場したスチャダラパーのANIさんの足元が580で、それが話題になり即完売でした。第2弾(2001年9月)では、あまりの人気で問い合わせが殺到して収拾がつかなくなって…。スニーカーショップ史上初めて抽選販売を実施しました。ただ当時はめちゃくちゃクレームがありました。「店が客を選ぶのか」って怒られた(苦笑)

YOPPI そうだったね…。リリース直後の店舗での行列とか、クレームのことまで想定してなかったもんね。
真柄 当時、好きにカラーリングにできるというのは本当に画期的で、コラボレーションって言葉もなかった時代。しかもヘクティク、ミタスニーカーズのトリプルネームで小売店発信なんて皆無だったんですよ。しかも僕らの提案する案はすべて受け止めてくれたのでニューバランス側と揉めたことも一度もないんです。
国井 今思えば、SNSもなくインターネットも黎明期の時代に個人の関係性や口コミだけで世界規模で広がっていったのって凄いなと。企画を重ねるごとにタイムラグなく海外の友人にも届けていました。シーディングなんて言葉もない時代に。

–––その甲斐あって2008年※にはグローバルモデルにも採用されましたね
YOPPI 嬉しかったですね。最初、アメリカのスタッフが工場で580を見て「かっこいい、欲しい!」と。もちろん日本企画なので、最初は誰も知らなかったらしいです。
国井 当時はニューバランス直営店での販売がなかったので、ニューバランスジャパンの人たちも公平にヘクティクかミタスニーカーズで買うしかなかった。手に入らなくて、オークションで高値で買われてしまった方もかなりいましたね。
YOPPI あと、アメリカのチェーンストア、フットアクションの広告に出たのはインパクトが大きかった。「日本から来た580」みたいなコピーだったからね。ある意味、僕の中でアメリカンドリームが叶った瞬間でした(笑)。
国井 その広告は雑誌“COMPLEX”(コンプレックス)に掲載されていたんです。
真柄 グローバルモデルはもちろん、2000年に始めた頃、37シリーズまで続くなんて思いもしなかったね。

※参考記事“COMPLEX”
https://www.complex.com/sneakers/a/brendan-dunne/new-balance-mt580-history?utm_source=dynamic&utm_campaign=social_widget_share

–––あらためて「MT580の魅力」とは何でしょうか?
国井 このスニーカーは、靴そのものだけでなく、携わっている人々の素晴らしい関係性から生まれたものだと言いたいです。時代が変わってもニューバランスからのリスペクトを本当に感じますし、僕らにとっても感謝しかありません。2000年当時も直ぐにマスマーケティングとして大規模な展開もできたはずなのに、このコラボレーションに専念してくれました。おそらくその姿勢もお客様にしっかりと伝わっているのだと思います。

–––それでは最新作となるモデルのテーマを教えてください
国井 今回はニューバランスからのオファーだったのですが、テーマはオリジネーターが若い世代に580を再提案する「原点回帰」というリクエストでした。そこで3人の意見は一致して「見た目だけにフォーカスして、昔を振り返るのはおもしろくない」と。今までのコラボレーションの一貫したコンセプトって「サンプリング」なんですよ。いつもデザインソースがあって、昔話をするのではなく、今自分たちが考えている最新を表現しようと。そんな話を進めるうちに、真柄さんから今回のテーマについて提案がありました。

580のコラボレーションは、
どれも「サンプリングありき」だった

(真柄尚武 / マスターピースサウンド)

真柄 580は、どのタイミングも「サンプリングありき」だったので、今回は「ミリタリー」をコンセプトにしたいと。
国井 今回のサンプリングの元ネタはニューバランスの950 V2というモデルで、アメリカ国内でも非売品なランニングシューズ。実は過去の580のコラボレートではゴアテックスを搭載させるプランもあったけど実現しなくて、今回はそれを実現させてブラッシュアップさせる意味合いも含め、ニューバランスに逆提案しました。

–––最新作の特徴を教えてください
国井 950 V2に着想を得てアウトソールもビブラムを採用し、新規でモールド(金型)から起こしてアップデートさせました。ルックスとしてのサンプリングに留まらず機能面も格段に昇華していますし、アッパーはシームレスでフィッティング性を高めるファントムフィットで仕上げています。結局、最初のニューバランスのオファーとは真逆なコンセプトになりました(苦笑)。でもすべて僕らの提案をすべて受け入れてくれました。今回も感謝しかないです。

–––今回一番こだわっている所は?
国井 シンプルにやりたいことをやるっていうことじゃないですかね。今のコラボレーションってすごく表面的でかつ、商業的になっていると思うんですよ。売れればなんでもOKみたいな。ブランドの名前やロゴが簡単に変わり、タグが付いてさえいればいいみたいな。それとは違って、僕らはデザインの前提にあるコンセプトを重視したいんです。だから最初に真柄さんから950 V2の提案があった時、自分もすごく納得できました。

今回は、みんなが見慣れた580ではない
仕上がりになっているからいい

(YOPPI / オンブレ・ニーニョ)

–––完成品を見た感想は?
YOPPI みんなが見慣れた580ではない仕上がりになっていると思うので、それが今回とても良かったなと思います。
真柄 ゴアテックスにも出来ましたし、思った以上の出来になりました。
国井 僕的にはインソールに鎮座したロゴが全てです。過去に囚われることなく、現在進行形の580を様々なジェネレーションやジェンダーに体感してもらえたら嬉しいですね。

MASTERPIECE SOUND × Hombre Niño × mita sneakers
580 GTX

¥29,700

 

Classic and Modern
Exquisite balance is good
New Balance 2023 FW Best Selection Part5

今年はMT580イヤーだが、それ以外のラインナップも相変わらず充実している。ニューバランスが提案するクラシックとモダンを組み合わせたハイブリッドモデルの中から編集部が厳選したベスト5モデルを紹介しよう。
Photo : Masataka Nakada (STUH)

90/60
New Balance 2023 FW Best Selection

U9060ECC
GRAY
¥19,800

昨年7月の登場以来、スニーカーファンから注目を集め続ける人気モデル90/60(ナインティシックスティ)。ニューバランスを代表する990と、2000年代初頭に登場した860からテクノロジーやシルエットを取り入れ、ソールユニットには2000年代のランニングシューズのソールを参考にした993をベースとして、860v2のエッセンスを取り入れたハイブリッドモデル。秋冬らしいシックなカラーリングが絶妙な一足に仕上がっている。

2002R
New Balance 2023 FW Best Selection

M2002RXM (GORE TEX)
WHITE
¥26,400

本誌読者であれば説明不要の超人気定番モデル、2002Rからゴアテックスバージョンのホワイトカラーが登場。2010年にデビューしたMR2002からインスパイアされた重厚感あるデザインが特徴。MR2002は、ニューバランスの最高の技術力を誇る「スーパーチーム33」が生産を担当したことでも知られるUSA製のフラッグシップモデル。秋冬コレクションからデコンストラクション(脱構築)バージョンをブラッシュアップし、スエードとリップストップナイロンのコンビネーションにドローコードを採用したモデルが登場している。

M2002RDN
KHAKI
¥22,000

M2002RDO
NAVY
¥22,000

M2002RDP
KHAKI
(atmos exclusive model)
¥22,000

ML610
New Balance 2023 FW Best Selection

ML610T (GORE TEX)
WHITE
¥24,200

2011年に登場したエントリー層向けのトレーニングシューズ、MT610を元にテッキ―なトレイルルックが人気のML610から初のゴアテックスバージョンが登場。また初となるホワイトカラーにドローコードが採用されている。

 

1906R
New Balance 2023 FW Best Selection

M1906RCE BLUE / SILVER
M1906RCF WHITE

¥19,800

ニューバランスの誕生年である1906という名を冠し、2009年にハイパフォーマンスランニングシューズとしてリリースされた1906を再構築した1906R。今季は、2000年のカラーからインスピレーションを受けたニューカラーが登場している。

 

WARPED RUNNER
New Balance 2023 FW Best Selection

WARPED RUNNER
UWRPDMOB

OFF WHITE
¥22,000

シフテッドシリーズの最新作となるワープドランナー。現代的なファッション空間に合わせて進化させるべく、定番モデルをあえて歪ませた彫刻的で近未来的なデザインで表現されたシフテッドシリーズ。本モデルは、流線形のフォルムを強調する特徴的なボリュームのあるシルエットに、ミッドソールには反発弾性に優れた素材、FuelCellを採用。クラシカルな表情と最新テクノロジーを融合させた一足に仕上がっている。

INFORMATION
ニューバランスジャパンお客様相談室
0120-85-7120

pagetop